短編・その他
□2/14 ブバルディア
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東堂を無視し続けて、昼休み。
「名無しさん」
東堂は私に声をかけてきた。
無視を続ける私の腕を掴み、強引に私を引っ張って教室を出た。
「ちょ、東堂!何すんのよっ!」
今度は東堂が私の言葉を無視し、屋上まで私を引っ張って行った。
途中から、抵抗しても無駄だと感じ、私は大人しく東堂に腕を掴まれたまま後を付いて行った。
屋上に着くと、東堂はようやく私の腕を離した。
「何よ・・・」
多分、無視したことだろう。悪いとも思う。
けど、やっぱりもやもやとした気持ちが私の中に渦巻く。
「すまない」
そう言って、東堂は頭を下げた。
「・・・え?」
予想外の展開に、私は目を大きく見開いて東堂を見た。
「名無しさんの友人から言われたんだ。俺が、他の子からチョコもらっているのを見て喜ぶ彼女はいないんじゃないか、って」
いつの間に・・・。
「嫌な思いをさせた。すまない」
そう言う東堂は、本当に悪いと思っているようで、私の中に罪悪感が募る。
「チョコは、すべて返してきた」
真っ直ぐに私を見つめ、東堂はそう言った。
私は、驚いて言葉もでなかった。
普段、女の子を悲しませるようなことをしない東堂が、せっかくもらったチョコを、返した・・・?
「ごめん、東堂」
私は泣きたくなってきて、視線を落としたまま謝った。
「いや、俺こそ、嫌な思いをさせた。・・・許してくれるか?」
そう言って不安気に瞳を揺らす東堂の服の袖を掴む。
「ん・・・。私こそ、ごめん。無視して・・・」
「・・・あれはかなり堪えたぞ」
そう言って、苦笑している東堂が視界に入る。
「チョコ、くれるか?」
また不安そうにする東堂に、ふっと笑い、私はうなずいた。
「うん」
その言葉に、東堂は安心したように息を吐き出した。
「よし、では今日の部活を見学しにくるといい!俺の勇士を名無しさんのためだけに魅せてやろう!!」
いつもの自信満々な東堂になり、びしっ、と指を指しながら言う姿に苦笑し、私はうなずいた。
「じゃ、楽しみにしてる」
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