短編・その他
□テロペア・スペキオシッシマ
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今日は尽八君とデートの日。
ですが、彼はまだ到着していません。遅刻なんてめずらしいな。
私が尽八君を探して辺りを見渡すと、人の雑踏の向こうに、尽八君を見つけた。
キョロキョロと辺りを見渡していて、どうやら私を探しているようだった。
駆け寄って、後ろからポン、と尽八君の肩を叩く。
「おはよう、尽八君」
振り返った尽八君にニコリと笑いかけると、尽八君も笑い返してくれた。
「おはよう、名無しさんちゃん。遅れてすまない。部のみんなに出かけるところを見られてしまってな」
そう言って、申し訳なさそうに眉を下げる。
「大丈夫だよ」
安心させるように笑いかけると、尽八君も安心したように笑った。
「名無しさんちゃんは、俺を見つけるのが上手いな」
「そうかな?」
私が首を傾げると、尽八君は大げさなほどにうなずいた。
「んー、尽八君、目立つから」
私がそう言うと、尽八君は胸を張った。
「ふふん、そうだろう。やはりこの俺の輝きはこんな雑踏の中でも目立ってしまうのだな」
尽八君はハッハッハッ、と笑った。
「ふふ」
確かに、尽八君はイケメンの部類に入るから目立つけど、でも、ちょっと違う。
「尽八君だから、見つけられるんだよ?」
尽八君の顔を覗き込みながら言い、尽八君の手を取って歩き出す。
「行こっか」
ニコニコと前を向いて歩いていた私は、私に手を引かれて少し後ろを歩いている尽八君が口元に手を当てて少し顔を赤らめていることなど、知る由もなかった。