短編・その他
□クリスマスローズ
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放課後、福富君の部活が終わるのを待ってから、私は福富君と一緒に下校していた。
付き合うようになってから、部活で忙しい福富君とあまり一緒にいられる時間がないため、放課後はこうして福富君が家まで送ってくれるのだ。
会話はあまりないが、それでも私にとってはとても幸せな時間だ。
でも、今日はなんだか福富君の様子がおかしかった。
いつもよりも口数が少なく、さらによく見るとなんだか耳が赤いような気がする。
「福富君、風邪でもひいた?」
福富君を見上げて言う私に、福富君は一瞬少しだけ目を大きくして顔をそらした。
「い、いや、なんでもない」
やっぱり、なんだか変だ。東堂君になにか言われたのだろうか。
それとも、私のことなんか好きじゃない、とか・・・。
考え出したら、どんどんと嫌な方向へとしか考えられなくなっていく。
「・・・名無しさん・・・」
少し緊張したような福富君の声。
うつむいていたから気づかなかったけれど、福富君は私の数歩後ろで立ち止まっていた。
「福富君?」
「そ、その」
言いよどむ福富君は、目を忙しなくあちこちへと動かしている。
別れ話とかじゃ、ないよね・・・?
涙が出そうになるのを、拳を握って必死に耐えた。
「な、に・・・?」
私の声は自分でも驚くほど擦れていた。
その声に驚いたのか、福富君がハッとして私を見た。
そして、意を決したように軽く深呼吸をすると、ゆっくりと私に近づいてきた。
三歩も進めば距離は詰まるのに、私にはとてもゆっくりと感じられた。
ふわりと、何かに包まれた。
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