短編・その他
□クリスマスローズ
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「・・・ふむ、なるほどな」
話を聞き終えた東堂君は腕を組んで何か考えている様子だった。
「福富君、私のこと好きじゃないのかなぁ?」
言葉にしたら、涙が出そうになった。
「そんなことはないと思うぞ」
きっぱりと言い張った東堂君が少し意外で、なんで?と首を傾げながら尋ねた。
「入学式の日に一目惚れしたそうだ」
「は?」
誰が?と首を傾げる私に、東堂君は何を言っている、といったような顔で言った。
「今は福富の話をしているのだろう」
福富君が?誰に?と、今度は逆の方向に首を傾げる私に、東堂君は腕を組んで、また、何をいっているんだ、といったような顔をした。
「名無しさんちゃんに決まっているではないか」
「・・・」
「名無しさんちゃん?」
「えぇっ!?」
動揺したために私の座っていた椅子がガタン、と大きな音をたて、クラスメイトが何だ、何だと注目してくる。
私は少し小声になって東堂君に尋ねた。
「東堂君、それ、本当?」
「本当だ。何だ、福富から聞いていなかったのか」
その言葉が本当なら、私はとてもうれしい。
けど、それならやっぱり、本人から言ってもらいたい。
私の複雑そうな顔を見て何かを察したのか、東堂君が胸を張って言った。
「よし!この山神こと東堂尽八に任せておけ!」
自信満々に言う東堂君には悪いけど、不安しかない。
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