短編・巻島
□初デート
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集合場所にはもうすぐ着く。ああ、もう結構な人だかり。でも、彼の髪は特徴的な色をしているから、すぐにわかるだろう。
まだ来てはいないだろうけれど。
そう、思った。のに、いた。
もう、来てた。
「あ・・・」
向こうも私に気づいた。ゆっくりと近づいてくる。そして、私の前で立ち止まると、少し照れたように顔をかいた。
「あー、おはよう」
「おはよう。早い、ね。巻島君」
私もなんだか照れくさくなってうつむいてしまう。
「それをいうなら、名無しさんもっショ」
それ以上会話が続かなくて、気まずい雰囲気になる。
「あー」
巻島君が何かを言おうとしている。
「なんか、その・・・」
もごもごと言いにくそうにしている。私はそっと顔を上げて巻島君の顔をのぞき見る。
巻島君の顔は少し赤くなっていて、目を行ったり来たりさせている。
「私服、初めて見た」
「うん・・・。その、変、かな・・・?」
「あー、いや、そうじゃなくって」
巻島君は、こういうの苦手なんだよな、とポソリと呟いた後、私と目を合わせずに言った。
「似合ってる、ショ・・・」
口元を手で隠して言ったために少しくぐもっていたその言葉は、しっかりと私の耳に届いた。
巻島君が頑張って言ってくれた。なら、今度は私が頑張る番。
「巻島君も・・・」
巻島君がこちらを見る。
私たちの目が合う。
「カッコいい、よ・・・?」
はにかんで笑う私の顔は、巻島君にも負けないくらいに赤かったと思う。