長編・金木犀

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朝、登校途中で幼馴染に会った。


「部活は?」

「今日は朝練ナシ」


おしゃべりをしているうちに、下駄箱に着いた。

靴を履きかえようと、下駄箱を開けると、一通の手紙が入っていた。


「うわ、それラブレター?」

「ええ?」


私はそっと、封筒を開けてみた。

昼休みに裏庭に来てほしい、とだけ書かれた紙を見て、幼馴染のテンションが少し上がった。


「やっぱラブレターじゃない?」

「まだそうと決まったわけじゃないよ」

「差出人は?」

「わかんない」

「ふーん。ま、隠れて側にいてあげるから、行ってきなよ」

「ええ?」


幼馴染の言葉に、私は呆れたように溜息を吐いた。


「それ、ただ相手の顔が見たいだけじゃない?」

「あったりまえじゃん」


胸を張る幼馴染に、私は溜息を吐いた。



お昼休みになり、私は指定された裏庭へ来た。

そこにはすでに男の子がいた。

幼馴染は、側の植木の近くに隠れている。


「あの・・・」


私が声を掛けると、男の子が振り返った。


「来てくれたんだ、よかった」


ほっとした様子の男の子に、私は何か用?と尋ねた。


「あ、あの・・・、名無しさんさん!好きです!付き合ってください!」


本当に、幼馴染の言った通りだった。

でも、告白されて思い浮かぶのは、巻島君の顔。


「えと、その、気持ちはありがたいんだけど・・・、私、好きな人がいるんです。・・・だから、ごめんなさい・・・!」



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