短編・荒北
□おはようエーデルワイス
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「名無しさんねぇちゃん!!」
そう言って私の後をちょこちょこと着いてくる、お隣に住んでいる2コ下の靖友君。私の弟みたいな子。
私に追いつくのを立ち止まって待っていると、ほどなくして靖友君は私に追いついた。
「行こっか」
靖友君の手を握って、また歩き出す。
靖友君は私の手を握り返し、ニッコリと笑みを浮かべた。
「・・・ろ・・・おい!起きろ!」
「うーん・・・」
大きな声が耳元からして、私はベッドからのそのそと起き上がった。
重い瞼をこすると、視界には靖友君。
「あれ?靖友君?・・・なんでいきなりおっきくなっちゃったの?」
「あァ?まだ寝ボケてんのかヨ」
呆れ顔で私を見てくる靖友君に、だんだん脳が冴えてくる。
「あ、夢かぁ」
そんな私の様子に、靖友君はハァ、と大きな溜息を吐いた。
「いーからさっさと起きろよナァ。今日出かけたいって言ったのは名無しさんダロォ」
いつまで寝てんだよ、とぶつぶつ言う靖友君に、私は唇を尖らせた。
「今日一日靖友君が部活ないから、私は昨日のうちに大学の課題一生懸命終わらせてたんですぅ」
「はいはい。いーから、さっさと準備して来いヨ。下で待ってるからァ」
そう言って出て行こうする靖友君の背中に向かって、呟くように言った。
「・・・昔はあんなに可愛かったのに・・・」
「あァ?何か言ったァ?」
首だけをこちらに向けて怪訝な顔をする靖友君に、なんでもない、と答えると、彼は私の部屋を出て行った。
お隣に住んでいる2コ下の靖友君。
私の、恋人。