短編・巻島
□スタート!
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「巻島くーん!!おはよーう!!」
朝、教室に向かう途中で巻島君を見かけ、私は大きく手を振りながら駆け寄った。
私の声に振り返る巻島君の顔はちょっと不機嫌そうで、でも、毎日のことだから見慣れてしまった。
「名無しさん、声、大きいショ」
迷惑そうに眉を寄せる巻島君の隣に立ち、私はめげずに言う。
「おはよう」
そう言うと、巻島君は溜息を吐きながらも返してくれる。
「・・・はよ」
入学式で巻島君に一目ぼれをしてから、3年目に突入した。
私は毎日巻島君に挨拶をしている。
1、2年のときはクラスが違ったけど、ようやく神様への祈りが通じたのか、3年になり、ようやく同じクラスになることができた。
とはいうものの、2年間挨拶くらいしかしてこなかった私は、今更何をどうしたらいいかわからず、授業中チラチラと巻島君を眺めることしかできていない。
それですら幸せだぁ、と言ったら友人に叩かれた。
最近、ようやく一歩進めた、のかわからないけど、帰りの挨拶もできるようになった。
ヘタレ、と言う友人の言葉は無視。
「あ、巻島君!!部活頑張ってね!!バイバイ!!」
ブンブンと引きちぎれんばかりに手を振って、ニヤけそうになる顔を抑えつつの下校。
何ニヤニヤしてんの、と友人に言われたから、ニヤけは抑えきれていなかったらしい。
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