短編・荒北

□合わさる目
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「失礼しまーす」


ガラリと開いて人が入ってきた。

ここは保健室。

只今保険医は出張中にてここにはいません。

ので、保健委員の私に白羽の矢が立ち、まぁ、ここにいるわけです。


「あ・・・」


入ってきた人に目を向けると、自転車部の、荒北靖友。

中学一緒だったし、同じクラス。


「センセーいねーの?」


保健室の先生は美人さんだから、もしかしたら荒北は狙って・・・?


「先生、既婚者だよ?」


つい、思ったことが口に出てしまった。

私の言葉を聞き、荒北が眉を吊り上げて変な顔をした。

まるで、「ハァ?」と言うように。いや、言った。まるでヤンキー。元ヤンだけど。


「なんでそーなンだヨ。見りゃわかんダロ。怪我だ怪我ァ」


そう言う荒北の膝を見れば、たしかに擦り傷があった。


「あ、そう」


気の抜けた返事をしてしまった。

荒北がずかずかと中に入ってきて、私の前に置いてある椅子にどかっと座った。


「名無しさんチャン、確か保険委員だったナァ」


知ってたんだ・・・。意外だ。


「うん」


頷くと、荒北が私に膝を見せてきた。


「手当て、してくれんダロ?」


その言葉に頷き、私は消毒や包帯やら、必要なものを棚から出した。



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