短編・荒北

□B
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先に「A視界明瞭につき」をお読みください。



その日は、なんか早くに目が覚めた。

二度寝する気にもならなかったから、自転車に乗った。

適当に学校の周りを走っていると、前に地面にしゃがんで何かをしているうちの学校の制服をきた女子がいた。

近づいて見てみると、隣の席の名無しさんだった。

コイツは、いつも俺にびくびくしてる。

俺が怖いんだろう。


「何してんだァ」


俺がそう声をかけると、名無しさんは顔を上げた。


「えと、コンタクトを落としてしまって」

「コンタクトォ?」


そういや、前にメガネかけてた時あったな。普段はコンタクトなのか。

俺は自転車から降りた。


「ここで落としたのかよ」

「うん」


名無しさんが頷いたのを確認し、俺はしゃがんだ。

そういやコイツ、今は俺におびえてないな。なんでだ?

そんなことを考えながら地面に視線を落としていると、視線を感じた。


「お前ェも探せよ」


少し低い声が出た。


「ハイッ」


ああ、おびえさせたか?せっかく普通に話せていたのに。

俺がそんなことを考えていると、名無しさんもしゃがんで一生懸命コンタクトを探す。

そんな姿に俺は少し笑い、また地面に視線を落とした。

しばらくそうして探していると、キラリと光るものが見えた。

もしかしてと近づいてよく見ると、やはりコンタクトだった。


「あったぞ」

「ほんと?」

「ほれ」


コンタクトを差し出すと、名無しさんは「ああありがとぉ・・・!!」とコンタクトを掌に乗せ感極まったように言った。

そんな姿にまた笑い、俺は自転車にまたがった。


「じゃ、俺は行くから」


ジャッ、と音をたて、俺はその場から去った。


 

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