短編・荒北

□Bプラスマイナス0センチ
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先に「マイナス28センチA」をお読みください。



朝、いつもよりも早起きをして、昨日のうちに用意しておいたお弁当箱2つを手に取る。

ニヤける顔を押さえなくても、家族はまだ寝ているから、誰かに見られる心配はない。

さっそくエプロンをつけて、仕込んでおいたお肉を冷蔵庫から出す。

作るのは、から揚げ。それ以外にも作るけど、メインはから揚げ。

お肉ばっかじゃなく、野菜も入れて。

しばらくして、失敗することなくちゃんとできたから揚げをお弁当に詰める。

2つの完成したお弁当を見て、私はまた顔がニヤけてくるのを感じた。

荒北君、喜んでくれるといいなぁ。

あ、でも、まずいって言われたら・・・。いやでも荒北君はそんなこと言わない・・・よね?うーんどうだろ。やっぱ誰かに味見してもらったほうがいいのかな・・・。

お弁当を前にうんうんと唸りながら考え込んでいると、脇から手が伸びてきた。


「いただきまーす」


余ってお皿に盛っていたから揚げを1つつまみ、その手の持ち主は自分の口にから揚げを放り込んだ。


「お姉ちゃんっ!?」


私が驚いて振り返ると、姉はもぐもぐと口を動かしていた。

そして、から揚げを咀嚼し終えると、ニッコリ笑った。


「うん、おいしいんじゃない」

「ホント!?」

「うんうん。きっとカレシも喜んでくれるよー」


ニヤニヤと笑いながら、姉はそのままキッチンを出て行った。

結局何をしにきたのかはわからないけど、とりあえずおいしいと言ってもらえたから、自信はついた。

大丈夫。荒北君ならきっとおいしいと言ってくれるはず!

そう意気込み、いつもよりも少しだけ重い鞄を肩にかけ、私は家を出た。

緊張しているのか、いつもよりもゆっくりと時間が流れているような気がする。





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