短編・荒北
□A
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先に「@マイナス28センチ」をお読みください。
「ンな量で足りんのかヨ」
昼休み、昨日約束した通り、俺たちは一緒に昼メシを食っていた。
校舎裏の、丁度日の当たる場所(猫がよく昼寝をしている)に、向かい合わせに座った俺たちは、さっそく弁当を広げた。
といっても、俺は買い弁。コンビニの袋からパンを出す。
こいつは、自分で作ってんだか親に作ってもらってんだか知らねぇが、弁当だ。
ちっさい弁当。
「荒北君は、いっぱい食べる女の子のが好き?」
おかずに伸ばしかけた箸を止め、恐る恐ると言った様子で俺をうかがい見てくる。
「あ?別にそんなんどーでもいいケド」
俺のその言葉にホッとした様子で胸を撫で下ろし、止めていた箸を再び動かした。
「それ、自分で作ってんのォ?」
「え?お弁当?」
新しく開けたサンドウィッチを食べながら、俺はうなずいた。
「うん。自分で作ってるよ」
それがどうかした?とでもいうように首を傾げるこいつに、ふーん、と言いながらサンドウィッチを呑みこんだ。
「あ、荒北君にも・・・」
顔を赤らめてもじもじとしだした名無しさんを、俺はまたもう一個のサンドウィッチに手を伸ばしながら首をかしげた。
「作って、こようか・・・?」
迷惑じゃなければ・・・、と上目遣いに俺を見てくるこいつは確信犯なんじゃないかと思う。
「じゃ、から揚げ入れてほしーなァ」
にやけそうになる頬を堪えながらそう言った俺は、ごまかすようにベプシを飲んだ。
多分、抑え切れてなかったと思うから。
「わ、わかった!頑張る、ね」
若干頬を染めて笑う名無しさんを見ていたら、別にニヤけ顔なんかどうでもいいような気持ちになった。
なんだコレ。俺らしくもねぇ。
そんなことを思いながら、悪い気分ではなかった。