短編・その他

□2/14 ブバルディア
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「名無しさん!!」


朝っぱらから大きな声を張り上げ、東堂は私に手を出してきた。

まるで、何かをせがむように手のひらを上にして。


「・・・は?」


冷めた目で見て、そう発した私の声はとても冷めていたと思う。

それでも東堂はひるまずに自信満々といった表情で私を見つめてくるものだから、イラつく。

それもこれも、すべては東堂の机の上に大量に置かれたかわいらしいラッピングをされたものたちのせいだ。

今日は、バレンタイン。女の子が好きな男の子に想いを伝える日。

東堂はモテる。そして、本人もそれを自覚し、決して女の子を邪険に扱わない。

例え、例え東堂に彼女がいたとしても・・・!

そう、私は東堂の彼女。だからちゃんとチョコも作ってきている。

東堂も、私からチョコをもらえるものだと思っている。


「何、この手」


そう言うと、東堂は何を言っているんだ、といった調子で言った。


「今日はバレンタインだろう」

「・・・あっそ」


私はそれだけ言うと、東堂の横を素通りして自分の席に座った。


「なっ!?」


東堂が焦った様子で私に近寄ってきた。


「俺に渡すものがあるだろう!?」

「何を?」


こんなの、嫉妬だ。東堂が他の女の子からチョコもらってるのが嫌だなんて。

普段から女の子に優しい東堂を見ているだけでも多少の嫉妬があるというのに、恋人たちにとっても大切なバレンタインに他の女の子から大量にチョコレートをもらっているなんて、正直つらい。

でも、それを悟られたくない。私はそれから東堂を無視して、後ろの席の友達と話すことに集中した。

チャイムが鳴り、東堂は肩を落として席に戻って行った。

・・・さすがに、やりすぎただろうか。

後ろの席の友達が心配そうに私と東堂とを見比べている。

そんな彼女は、今日東堂と同じ部活の荒北という男に告白するためにチョコを作ってきている。私が半ば強制的にさっさと告れと言ったことも原因だろうが。


「告白、うまくいくといいね」


そう言うと、友達は顔を赤くして目を泳がせた。

・・・今日中にこの子、告白できるのかしら。



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