短編・荒北
□2/14 それはつまり
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人生初、バレンタインに告白。
友達に勇気づけられ、というよりもさっさと告れと言われ、私は気合の入ったチョコを作り、今日、学校に来た。
・・・はいいけど、結局勇気が出ずにもう放課後。
チョコを渡し、気持ちを伝えたい相手である荒北君はもう部活へ行ってしまった。
友達は心底呆れたような目で私を見てくる。
「だ、だって・・・」
涙目になりながら言い訳をしようとする私の頭を軽く叩き、友達は言った。
「まだ寮に帰っちゃったわけじゃないし、部活終わった後もまだチャンスはあるでしょ」
頑張んな、そう言って友達は手を振りながら先に帰って行った。
荒北君のために、甘さ控えめで作ったガトーショコラ。ムダにはしたくない。
けど、やっぱり緊張しちゃって、声をかけることすらままならない。
ぎゅっ、と綺麗にラッピングされたそれを握ると、ガラ、と後ろで教室の扉が開いた。
「ア?まだ残ってるヤツいたのかヨ」
そう言って、部活のジャージを着た荒北君が入ってきた。
「つか、何泣いてんノォ?」
怪訝そうに見つめてくる荒北君に、私はすぐに目にたまった涙を服の袖で拭った。
「あ、えと、その・・・」
言わなきゃ、そう思えば思うほど、私は言葉が出なくなってくる。
荒北君がすぐそこまで近づいてきているのがわかる。
「・・・アー」
私の前でピタリと足を止め、視線を逸らして髪をかき上げる荒北君。
「丁度腹減ってたんだよネ。ソレ、もらってもイーイ?」
ソレ、と私の手にあるチョコを指す荒北君に、私は驚いて目を見開いた。
「別に、ダメならいいけどォ」
「だ、ダメじゃないっ!」
ばっ、と身を乗り出して私はその言葉を否定した。その勢いのまま、頭が真っ白な私は言葉を続けた。
「もともと、荒北君につくったものだから!!」
言ってから、はっとした。顔に熱が集まってくる。
「あ、あの、その、つまり、その・・・」
視線を床に落とし、目を泳がせる私は、その先の言葉が続けられなくなっていた。
「それってつまり」
荒北君が私の顎を掴んで荒北君と顔を無理やり合わせた。
「俺のことが好きってコトォ?」
心臓が止まったかと思った。
言わなきゃ。ちゃんと、言葉に、しなきゃ。
「う、ん・・・。好き、です・・・。荒北君が、す」
その先の言葉は、荒北君の唇によってふさがれた。
すぐにそれは離され、荒北君は私の真っ赤であろう顔を見てハッ、と笑い、手に持っていたチョコを取って教室を出て行こうとした。
扉に手をかけたところで振り返り、言った。
「部活、終わンの待ってろヨ。・・・送ってく」
そう言い残し、荒北君は部活へと向かっていった。
私は体から力が抜け、へなへなとその場に座り込み、熱い頬を両手で触れた。
荒北君、それはつまり、期待してもいいって、ことですか・・・?