長編・金木犀
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俺の言葉に、名無しさんさんは目は大きく見開いていた。
そして、さらに顔を真っ赤にして、首を大きく横に振った。
「ち、違うの!!」
「違う?」
「あの、その、あれは・・・」
目を泳がせて、次の言葉が継げずにいる名無しさんさんに、ゆっくりでいいショ、と言うと、名無しさんさんは小さく深呼吸をした。
「だ、大丈夫、だから」
「大丈夫?もしかして、他校のヤツが好きとか?」
「そ、そうじゃなくて・・・!その、こ、断るための、方便、と、いいますか・・・」
ごにょごにょと言う名無しさんさんに、俺は両手で頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
なんだ、ソレ。
完全に、俺の勘違い?
大きく溜息を吐く俺に、名無しさんさんは上でおろおろしているのが伝わってきた。
「あー、てことは、別に、一緒にいてもいいって、コト?」
俺がしゃがんだまま、名無しさんさんを見上げるようにして言うと、名無しさんさんはうなずいた。
「う、うん!もちろん!!」
「クハッ」
思わず、笑いが漏れた。
なら、まだ諦めなくても大丈夫。
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