長編・金木犀

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『巻ちゃん、なんだか雰囲気が変わったようだね?』


電話越しに、東堂にそう言われた。

雰囲気が、変わった?


「そんなこと、ないっショ」

『いーや、変わったね!なんだか、柔らかくなったようだ』


自信満々に言う彼に呆れ、そうかよ、と返し電話を切ろうとすると、東堂が言った。


『さては恋だな!』


電話を切ろうとした指が滑り、携帯を落としそうになった。


「ハァ!?急に、なんショ!?」

『その焦り様!さては図星だな?どんな子だ?巻ちゃんの心を射止めた女子はいったいどんな女子だ!!?』


興味津々といった様子の彼に、俺は呆れて溜息を吐いた。


「別に、そんなんじゃないショ」

『ふふん、まだ気づいていないようだな。なら教えてやろう。巻ちゃん、恋とは!寝ても覚めてもその相手のことが頭から離れなくなり、一緒にいるとドキドキと心臓が高鳴り、相手のちょっとした言動にも心揺さぶられ』


長くなりそうだったので切った。

別に、一緒にいてドキドキするなんてことも、いっつも名無しさんさんのことが頭から離れなくなったりとかはない。

・・・、まぁ、名無しさんの言動に焦ったことはあったが・・・。

別に、俺のこれは恋とか、そんなんじゃない。ただ、俺にしては珍しい女友達ということに、戸惑っているだけだ。





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