短編・荒北
□君の心、我知らず
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「こんな寒ィのに、よくそんな冷ェもん食べられんナァ」
呆れたようにそう言う靖友の手にはベプシ。
「靖友だってベプシ飲んでんじゃん」
ベプシが2本入ったコンビニの袋を片手に、靖友は突然私の家に訪れた。
只今私たちはこたつに入って向き合い、私はアイスを、靖友はベプシを飲み団らん(?)している。
「ベプシはいーんだヨ」
「冬におこたで食べるアイスだっていいんですぅ。てゆーか格別なんですぅ」
「へいへい」
そんな下らない会話をしながら、私はアイスを食べ終えた。
「あーあ。終わっちゃったぁ。靖友ー、アイス買ってきてー」
「アー?何で俺が」
あからさまに顔をしかめる靖友に、私はごそごそとこたつの中に両手を入れて顎を机に乗せ、眠くて重たい瞼を懸命に押し上げて靖友を見た。
「いーじゃん」
「良くねぇヨ」
「だいたい、なんで靖友は突然うちに来たのサ。土産のアイスくらい持ってくるもんじゃない?」
「寮の暖房が壊れたんダヨ。つーか土産はアイス限定かヨ」
アー寒ぃ、なんて言いながら、靖友もこたつに手を入れる。
「買いに行く気はゼロですか」
「ったりめーダロォ」
唇を尖らせ、恨めし気に靖友を見る。靖友はもうこちらなど見ていなくて、アー、キモチーとか呟きながら夢の世界へ旅立とうとしていた。
「次来るときは買ってきてやるヨ」
そう言ったまま、靖友は夢の世界へ旅立っていった。
「・・・次って・・・。また来る気デスカ」
靖友にとって、私なんてただの友達なんだろーなぁ。
でもさ、また、とか言われたら、他の女の子よりはもしかしたら、とか期待しちゃうじゃん。
「・・・風邪ひくぞー」
私はそう呟いて、もそもそとこたつから這い出ると靖友にブランケットを掛けてやった。
(いい加減、気づけバァカ)
心の中で靖友がそんなことを思っているなんて知らずに、今日も私は靖友の友人を演じる。