短編・荒北

□ホット
1ページ/1ページ

「荒北君、鼻、赤いよ?」


学校から寮までの帰り道、彼氏である荒北靖友君の部活が終わるのを待ち、私たちは一緒に帰路に着いていた。


「アー、寒ィ」

「ホットドリンク飲む?」


ちょうど良いところに自販機があり、私が示すと、荒北君は一言言った。


「ペプシ」

「それ、冷たいじゃない」


私が笑うと、荒北君は、好きなんだヨ、と言い、自販機に500円玉を入れペプシのボタンを押した。

ゴトン、と音がしてペプシが出てくる。荒北君はそれを取らずに、また違うボタンを押した。

それは、ホットココアで、私の好きな飲み物だった。

また、ゴトン、と音がして、今度はココアが出てくる。おつりを取り、荒北君はココアを私に渡してきた。


「え?」

「やンよ」

「ありがとう」


差し出されたココアを両手で受け取りほほ笑むと、荒北君は私の頭をポンポン、とたたくと自分のペプシを飲んだ。


「冷てェ」

「それは、そうでしょう」


また私が笑う。


「名無しさんは手ェあっためとけヨ。この後俺の手もあっためてもらうんだからナァ」


そう言って、荒北君は笑った。

私はふふ、と笑うと、ココアをぎゅっ、と握った。

その後、ココアを飲みほした私は、荒北君と手を繋いで帰った。




 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ