短編・荒北
□ホット
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「荒北君、鼻、赤いよ?」
学校から寮までの帰り道、彼氏である荒北靖友君の部活が終わるのを待ち、私たちは一緒に帰路に着いていた。
「アー、寒ィ」
「ホットドリンク飲む?」
ちょうど良いところに自販機があり、私が示すと、荒北君は一言言った。
「ペプシ」
「それ、冷たいじゃない」
私が笑うと、荒北君は、好きなんだヨ、と言い、自販機に500円玉を入れペプシのボタンを押した。
ゴトン、と音がしてペプシが出てくる。荒北君はそれを取らずに、また違うボタンを押した。
それは、ホットココアで、私の好きな飲み物だった。
また、ゴトン、と音がして、今度はココアが出てくる。おつりを取り、荒北君はココアを私に渡してきた。
「え?」
「やンよ」
「ありがとう」
差し出されたココアを両手で受け取りほほ笑むと、荒北君は私の頭をポンポン、とたたくと自分のペプシを飲んだ。
「冷てェ」
「それは、そうでしょう」
また私が笑う。
「名無しさんは手ェあっためとけヨ。この後俺の手もあっためてもらうんだからナァ」
そう言って、荒北君は笑った。
私はふふ、と笑うと、ココアをぎゅっ、と握った。
その後、ココアを飲みほした私は、荒北君と手を繋いで帰った。