短編・荒北
□風紀委員の機械娘
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私はこのクラスの風紀委員です。そしてこのクラスには元ヤンである荒北靖友君がいらっしゃいます。
そのためには私は、風紀委員の先生からある使命が課せられています。
それは、荒北靖友君の監視。
荒北靖友君が何か問題を起こしたらすぐに先に連絡するように言われています。
私はここ数日、荒北靖友君を監視していますが、彼を監視する意味はあるのでしょうか。
2年生になった私は、去年1年生のときも荒北靖友君と同じクラスでした。
確かに、最初はヤンキーと同じクラスになってしまった、と思い、関わらないようにしよう、と思いましたが、彼はある日急に髪を切り、そして自転車部に入りました。
どういった心境の変化があったかは知りませんが、それ以降彼は大分丸くなったような気がします。とくに、福富君といるとき。
授業中の居眠りなどはよく見かけますが、その程度です。部活の仲間に怒鳴っているところも見かけますが、別に脅しているとか、そういった感じには見受けられません。
ですがまぁ、先生が見ていろと言うなら、私はそれに従うだけですが。
「名無しさんチャァン?」
ある日、1人教室に残って先生に頼まれた仕事をしていると、ガラリと扉を開けて荒北靖友君が入室してきました。
「なんですか?荒北靖友君」
私がそう尋ねると、彼は顔をしかめました。
「フルネーム、止めろヨ」
「ああ、了解しました」
それで、何の用かと首を傾げていると、荒北君はツカツカと近づいてきました。
「なぁんで俺のこといっつも見てンのォ?」
その問いに、私はなんと答えようかと頭を悩ませました。
素直に言ってしまってよいものなのか・・・。
私が悩んでいると、荒北君が私の前の席に座り、ズイっ、と顔を近づけてきました。
「俺のこと、好きなワケェ?」
す、き・・・?
その言葉に顔を赤くした私に、荒北君は獲物を見つけた獣のように目を細めてニヤリと笑った。