短編・巻島

□怖くないけど甘えたい
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巻島とのデートは、生憎の雨でお家デートとなった。

私としては、一緒にいられるならなんだっていいんだけど。


「巻島の家って、大きいね」

「ンなことないっショ」

「ねぇ、あの奥の扉の先には何が」

「開けるなっショ」


少し低い声で止められた。ケチ。

それにしても、雨はどんどんひどくなっていく。


「雨、ひどくなってるっショ」


帰れなくなる前に帰るか?と尋ねてきた彼に、私は唇を尖らせる。

部活、部活で忙しい彼との久しぶりのデートだ。もっと長く一緒にいたい。

そんな私の様子に、巻島は少し困ったような顔をした。


「・・・帰ってほしいの?」


少し不機嫌そうに言うと、巻島は私の頭に手を置いて、撫でながら言った。


「帰ってほしくはないけど、帰れなくなったら困るっショ」

「帰れなくなったら巻島ン家泊まる」


膝を抱えてそう言う私に、巻島は呆れたような溜息を吐いた。


「それは、俺が抑え効かなくなりそうだからやめてほしいショ」

「そこは耐えてよ」

「拷問ショ」


外では相変わらず雨がザーザーと降っている。いや、さっきよりも、もっとすごい、土砂降りだ。


「あ、光った」

「雷ショ?」


かなー。でも、遠いから大丈夫でしょー。私がそう言い終わるのと同時に、近くに雷が落ちた。すんごい音。


「・・・近かったねー。今の」


窓の外を見つめながら言う私に、巻島が微妙な顔で尋ねてきた。


「怖くないんショ?」

「んー?あ、そっか、おびえたほうが女の子らしい?キャー、コワーイ」

「棒読みで言われても。つか、全く怖がってないっショ」


そう言う彼に、そんなことないよー?と言いながら、さりげなくすり寄った。







 

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