短編・巻島

□B
1ページ/2ページ

先に「優しい人A」をお読みください。



巻島君を好きなんだと自覚してからというもの、私は寝不足の毎日を繰り返していた。

授業は集中できない。前のように観察もできない。巻島君が視界に入るだけで、それだけで私は頭が真っ白になってしまう。

そして、私はとうとう友人に泣きついた。


「どうしよー!!」

「だぁから、告白するしかないでしょうが」

「うー・・・」


小さく唸る私の頭を撫でながら、友人は言った。・・・それができたら苦労はしないのに。


「女は度胸!当たって砕けろ!!」

「砕けちゃうの!?」


そんな友人に後押しされ、私は放課後巻島君に少しだけ時間をもらった。





「ご、ごめんね、部活、忙しいのに」

「あー、いや、別に」


そう言う巻島君は早く部活に行きたいのか、窓の外を見たままで視線を合わせてくれない。


「あ、あの、その・・・」


早く言わなければ。そう思えば思うほど焦って、私の頭の中は真っ白になっていく。


「・・・好きなヤツ、いるんショ?あんま男と2人っきりになると、そいつに勘違いされるショ」


私と目を合わせずにそう言った巻島君に、私の頭の中はもう完全に真っ白になった。


「っ!?はっ?ちょっ、なん!?」


巻島君が慌てている。こんな表情を見るのは初めてだ。

私の頬には、涙が伝っていた。


「へ?あれ?なんで・・・」


私の目からはどんどん涙があふれてくる。

巻島君は、あー、とか、うー、とか唸り、巻島君の制服の袖で少し乱暴に、でも優しく、私の涙をぬぐった。


「なんで、泣くっショ?」


その声は少し優しかった。

私はそれに答えられない。

きっと、巻島君は私のことなんか好きじゃない。それがわかってしまって、どうやって告白なんてすればいいというのだろうか。

ふわっ、と何かに包まれるのと同時に、私の視界が真っ暗になった。


 →
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ