短編・巻島
□B
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先に「優しい人A」をお読みください。
巻島君を好きなんだと自覚してからというもの、私は寝不足の毎日を繰り返していた。
授業は集中できない。前のように観察もできない。巻島君が視界に入るだけで、それだけで私は頭が真っ白になってしまう。
そして、私はとうとう友人に泣きついた。
「どうしよー!!」
「だぁから、告白するしかないでしょうが」
「うー・・・」
小さく唸る私の頭を撫でながら、友人は言った。・・・それができたら苦労はしないのに。
「女は度胸!当たって砕けろ!!」
「砕けちゃうの!?」
そんな友人に後押しされ、私は放課後巻島君に少しだけ時間をもらった。
「ご、ごめんね、部活、忙しいのに」
「あー、いや、別に」
そう言う巻島君は早く部活に行きたいのか、窓の外を見たままで視線を合わせてくれない。
「あ、あの、その・・・」
早く言わなければ。そう思えば思うほど焦って、私の頭の中は真っ白になっていく。
「・・・好きなヤツ、いるんショ?あんま男と2人っきりになると、そいつに勘違いされるショ」
私と目を合わせずにそう言った巻島君に、私の頭の中はもう完全に真っ白になった。
「っ!?はっ?ちょっ、なん!?」
巻島君が慌てている。こんな表情を見るのは初めてだ。
私の頬には、涙が伝っていた。
「へ?あれ?なんで・・・」
私の目からはどんどん涙があふれてくる。
巻島君は、あー、とか、うー、とか唸り、巻島君の制服の袖で少し乱暴に、でも優しく、私の涙をぬぐった。
「なんで、泣くっショ?」
その声は少し優しかった。
私はそれに答えられない。
きっと、巻島君は私のことなんか好きじゃない。それがわかってしまって、どうやって告白なんてすればいいというのだろうか。
ふわっ、と何かに包まれるのと同時に、私の視界が真っ暗になった。
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