短編*
□女の子になりたいわけじゃない2
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まあ確かに女の子物の服や小物が好きな僕はいっそのこと女の子に生まれてくれば良かったとか思ったことはあった。けどやっぱり僕は男の子だし、心が女の子ってわけでもない。男の子がやるゲームや遊びだって小さい頃もしていたし、初恋ももちろん女の子だった。だから決して僕は少女漫画みたいにイケメンに迫られることに憧れたりなんてしない。
そう、だからこの状況はとんでもなく迷惑かつどうして良いのかわからないものなのだ。
事件はこの間の土曜日、いつも通り服を探しに色んな店を練り歩いていた僕は変な男に追いかけられた。というのも原因は僕にあるのだがそこら辺は割愛させていただく。
「俺と付き合ってくれない?」
「はぁ?!」
な、何を言ってるんだこいつは!何より僕は男だ、男なのに男の僕に告白するなんて。…あ、今は女装してるのか。
とにかく僕は男色の気は無いし、どうせモテるなら女の子の方が嬉しい。とりあえず声をなるべく出さずにさりげなく断ろうとグッと息を飲む。
【すみませんが出会ったばかりの方とお付き合いする気はありませんので。】
「んー、じゃあデートしてからってのはどうっスか?」
どうっスかじゃねえよ!と、うっかり口を滑らせそうになったが危ない危ないと冷静になる。
【それよりも、先程の彼女は?】
「だから、別れたっス。そろそろ飽きてたから別に大丈夫っスよ!」
こ、こいつ!女性にモテない全国の男性(僕を含む)を馬鹿にしてるのか!
今にも振り上げそうな拳を空いている手で抑え込む。ここは街中だ、なるべく目立つことはしたくない。
【いや、ほんと、無理なので。】
「うーん…頑固っスねえ。あ、じゃあこれならどうっスか?!」
ポンっと拳を打った彼はおもむろに被っていたニット帽とサングラスを外した。
今までちゃんと見えていなかった彼の顔があらわになっていく。蜂蜜色の髪の毛は光に反射してキラキラと輝いていて、サングラスに隠れていた目は長い睫毛に覆われているがその隙間から見える髪の毛と同じ色の瞳からは目が離せなくなった。
と、言えど僕も男の端くれなので見惚れると言うよりは劣等感を感じたというかなんというか複雑な気持ちである。
【いや、どうっスか?と言われましても。何も変わりませんが?】
「え?!変わらないっスか?!えっと、ほら、見たことある顔だなーとか」
【無いです。】
「ヒドッ!」
普通ならここで即OKなんだけど、とこれまた女性にモテない全国の男性(僕を含む)に土下座物の失礼なことを抜かした気がするが聞こえなかったフリをする。