短編*
□ぼっちじゃない
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「黒子クンてほんと友達いなさそうっスよね!」
「なんですか…また君ですか。失礼ですね。い、居ますけど。」
朝早めに学校へ登校する黒子は、何時ものようにまだ人が少ない教室へと入った。
本来ならば静かに自分の席に座り、1人の時間をひっそりと過ごす予定である。しかし、その予定はいつもこの華やかなクラスメイトによって崩されてしまう。
黒子は物心着く頃からなにかと影が薄く、周りに存在さえ気付かれない子だった。
そんな幼少時を過ごしたせいか、あまり友達も作れず(そもそも気づいてくれない)寂しい学校生活を送っていた。
さて、此処で目の前の華やかなクラスメイトを紹介しよう。
彼の名は黄瀬涼太。中学生の傍らモデルの仕事もしている。その容姿と明るい性格からかいつも周りには女子や男子、更には先生、多種多様な人物が絶えない。
しかし何故だか僕にはこのように毎日毎日馬鹿にしてくるのだ。彼も毎朝早く来るようで、(失礼だがそのように見えなかったので驚いた。)朝僕を見かけるたびに僕の席まで来て言ってくるのだから彼の心境はよく分からない。面倒臭いだろう。
「嘘だー。だっていつも休み時間1人で本読むか携帯いじってるかだし、昼だって1人で食べてるじゃないっスか。友達なんかいないんでしょ。」
「だからなんだっていうんです?君には関係ありませんよね。もうほっといてください。」
「な、なんスか!俺はっ…、」
「あ、涼太ぁ!おはよ〜!」
何か言いかけた黄瀬君の元にこれまたいつも黄瀬君に纏わり付いている女子Aが、黄瀬君の腕に自分の腕を絡め媚びた声で挨拶をした。
もうそれからは黄瀬君は何も言うことが出来ず、その女子へおはよっス!と先程とは違う満面の笑みで挨拶をした。
なんで僕だけこんなにも黄瀬君に嫌われてるんでしょうね?
しかし、まあそんなことはどうでもいいのだ。
そんな朝の苛つく出来事など頭のゴミ箱へと捨ててしまおう。
そっと鞄の中から携帯を取り出した。