復活小説

□その1
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西の窓が明るくなれば(初ツナ&リボ/捏造未来)






※この文では初代の表記は基本的にプリーモで統一してあります(例外あり)
※プリーモは綱吉をデーチモ呼び





綱吉はふと執務机から顔を上げた。
夢中で書類を捌いていたが、先程時計を確認してからどのくらいの時間が経ったのだろうか。

自分の机の後ろにある窓から空を見てみれば、空に赤みがかかってきた頃合いだった。
ファミリーのクラッシャー獄寺と笹川が数日前から中期の遠征に出ているため、ボンゴレ本部の中はいたって平和なものであり、静かすぎるといっても過言ではないほど閑散としていた。
いや、普段がうるさすぎるのだろうが。

『デーチモ、もう終わりか』
「ちょ、プリーモ!! 急に出てこないでくださいよ!!」

急に綱吉のボンゴレリングが炎を放つ。
その炎はリングから離れ、綱吉の右側に移ると次第に大きくなって人を象り始めた。
そして現れたるはマフィア・ボンゴレの基礎になる自警団を組織したドン・ボンゴレ1世。

かつて些細なすれ違いと大きな悪意からマフィア間の抗争もどきにまで発展し、大きな傷と絆を残したシモンファミリーとの争いで砕かれたボンゴレリングをタルボにヴァージョンアップしてもらってからだ。
一定量以上の死炎を注入するとこの現象は起きるようになった。
しかも重要なのは「一定量以上の死炎」であり、「死炎を一定量以上」ではないということ。
つまりは、一度の注入で満ちていなくても、加算されて満了に達すれば具現化するということである。

綱吉にとっては迷惑きわまりない。
いかんせん、綱吉にとって1世は鬱陶しかった。
いや、綱吉だけでなく、誰がどう見ても鬱陶しいと思わざるを得ないほどである。
それほどまでに彼の行動は目に余った。

『ほう、今日はあの死神はまだなんだな』
「俺が早く終わっただけですよ」
『ああ、嵐がいないからか。確かにいつもよりだいぶ書類が少ないな』

綱吉の仕事が終わったということは、もしかしたらプリーモの苦手とする晴れのアルコバレーノであったリボーンが帰ってくる頃合いかもしれない。
そう思って口を開いたプリーモに綱吉がまだ時間でないことを告げると、彼は納得したように頷いた。
しかも綱吉が気を利かせて言葉にしていなかったことを、はっきりと言葉にしてしまっている。
本人に悪気はないであろうが。

綱吉は天然であった。
ドン・ボンゴレ10世を継いだ当初、ファミリーが度肝を抜かれるほど。
綱吉にとっての初めての同盟ファミリー間でのボンゴレ主催パーティーでのこと。
とある中小ファミリーのボス候補である少年が綱吉に見ほれて顔を赤く染め上げていたところ、熱があるのではないかと勘違いして自ら介抱しようとしたことは、ボンゴレだけでなくほとんどの同盟ファミリーの知るところとなった逸話である。

獄寺ではないが、一時今代のドン・ボンゴレは宇宙人だ、UMAだ、電波だと業界を騒がしたこともある。
それほどまでに綱吉の天然ぶりはものすごく、他人には理解できないほどであった。

そして、そこまではいかないが、プリーモも十分に天然に分類される才能を持っていたのである。
ただ彼の場合は希有なほどの超直感が備わっており、自分に素直すぎる性格をしていた。
故に言わなければいいことを口にして波風を立ててしまうのである。
いわゆるところのKY。
空気が読めない子。

「誰も隼人の所為だなんて言ってないですよ!! たしかに、ここ最近静かで平和だけど!!」
『ふ、あいつはGに似て直情型だからな』

実際獄寺だけが綱吉の仕事を増やしているわけではないので、綱吉は否定の言葉を述べた。
しかし言外に獄寺の行動が直結していることをほのめかしているため、フォローし切れていない。
生憎とこのボケボケコンビはそれに気がついていないので、突っこむ人物はいないのだが。

ふと、プリーモは笑みを浮かべた。
大切だった幼なじみ。
互いに亡き身であり、今は同じようにボンゴレリングの中に精神体として魂を縛り付けられてはいるが。






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