復活小説

□その1
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「あれ、何か入ってる……?」

綱吉は自分の下駄箱を開けた。
すると中にはシンプルな封筒が入っていて、沢田綱吉様へと雄々しく、だが達筆な字で書いてある。
決して男子学生が憧れる女子からの恋文ではないようだ。
そして裏返すと表よりも幾分小さな字で獄寺隼人と書いてあった。

「はぁ!? 獄寺ってGクラスの!?」

綱吉は声を荒げた。
といっても下駄箱には時間が時間なため生徒は誰もおらず、驚いた守衛が守衛室の開いている勝手窓から綱吉を見つめるだけである。
いたたまれなくなり、綱吉は渇いた笑いで誤魔化すと教室へと急いだ。
どちらにせよ、急がないと予鈴には間に合わない時間に差し迫っている。





「よ、ツナ。今日もいつも通りなのな」
「おはよ、間に合った〜」

結局綱吉が教室に入れたのは予鈴の2分ほど前だった。
少し走ったのか肩で息をする綱吉に教室の男子が僅かに沸いた。
ゴクリと唾を嚥下する音がし、数人前屈みになっている。
そんな教室を見渡して、綱吉の友人である山本武が声をかけた。
“彼”が不在である今は、綱吉を擁護できるのは自分だけである。

現在このクラスのボス的な存在であるリボーンは、HRが終わった後の授業のため準備室に向かっている。
リボーンはそういうことを自分からは到底行わないように思える男だが、実際そうであった。
かつてはパシリと公言していたスカルに全てを押しつけていたのである。

が、綱吉が一言、格好悪いと漏らしたのが改善のきっかけであった。
そして同時に文句を言いながらも従うスカルを印象いいよねとも。
もっともリボーンを改善させるとか、スカルを助けるとかそういう深い意味があったわけではない。
ただ単にそういった男ってどうなのかな、的なノリである。
スカルの件にいたっては自分の考えだけではなく、おおよそ社会一般的な印象でさらに女性にとってはという限定のつくものだったが。

色々なことに聡いリボーンだが、綱吉のこととなるとその脳みそは一転廻らなくなる。
例に漏れず、全てが綱吉のイメージアップに繋がると考えたリボーンは行動を改めるに至ったのであった。

「あれ、リボーンは?」
「ああアイツなら……」
「おせーぞダメツナ、今朝もあれだけ起こしただろうが」
「えへへ、いつもごめんね」

綱吉が席に着き、前に座っている山本に声をかける。
未だ寝ぼけ眼である彼には、曜日感覚というものを脳みそがまだ認識していないようだ。
そこにリボーンが準備室から戻ってきた。
ギリギリに登校してきた綱吉に嫌みを言うことを忘れない。
周りはこのリボーンの言葉が照れ隠しのための苦肉の策だと気づいており、さらに二人の仲の良さを強調させる文句に色めきだつ。
が、綱吉はそれのどちらも理解していなかった。
そして綱吉とリボーンの関係性を間近で観察してきた山本という親友は胸中で合掌するのだ、ご愁傷様と。






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