book 3

□弐
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牡丹に連れられてやって来たのは日本家屋だった。
しかも大きい。
「水も電気も通っとる。お布団もいっぱいあんでぇ〜。」
何でこの人遠足気分なんだろう。と二人は肩を落とした。
まぁ、一人でも明るくないとこんなところではやってけない。
「俺、少し寝てぇわ。なんか気持ち悪い。」
「大丈夫?さっちゃんは?」
「ううん。私は平気。」
「布団はそっちの部屋。あ、襖は全開にしといてな。」
青峰はノロノロと敷布団と掛け布団を出してそれに潜り込んだ。
牡丹はさつきを座布団に座らせる。
「ここ、結構新しいやろ?綺麗やし。縁側もあんねんで。」
「・・・・・・私達、どうなるの、」
下を向いて弱音を吐くさつき。
いつもとは違う彼女に牡丹は苦笑して、頭を撫でた。
「不安で怖いんは痛い程わかる。でもな、暗くしてると余計あいつらも寄ってくる。」
だから、とさつきの両頬を挟んで上を向かせる。
「できるだけ笑って誤魔化す。そうやったらええねん。な?うちが居る。大丈夫や。」
さつきは泣きそうになるのを堪えて、へらりと笑った。
それを確認してさつきの頭を撫でる。
「ここは札をぎょうさん貼ったし、庭に食塩水も巻いといた。ここには近づけんよ。」
牡丹は向こうの布団の塊を見ると吹き出した。
「丸まって寝ないと布団収まらんのな。」
「大ちゃん、192cmあるんだよ?」
「ホンマに?中学入るまではあんなに小ちゃかったんになぁー。」
もう巨人やんけ。と二人で笑う。
「聴こえてんぞコラァ・・・。」
「起きとったんかい。」







日が傾くに連れて不安は煽られる。
でも、それでも牡丹が居るから大丈夫。
夕飯はどこから取ってきたのか、みずみずしいトマトやキュウリの様々な野菜。
「腹の足しになんねぇよ。」
「青峰君、文句言わない!」
「それより具合どうなん?」
「あー、寝たら楽になったわ。」
牡丹は笑ってトマトに口を付けようとする、が、
バッと外の方へ向いた。
すると急に立ち上がり、玄関へ走っていく。
「おい!?」
二人も後を追い、そして目を見張った。
牡丹が腕に抱いて必死にそれの名を呼ぶ。
それは、
「黄瀬・・・?」
「きーちゃん!!!!」
紛れもない、キセキの世代の黄瀬涼太。
けれど彼は普通ではなかった。
顔は生気を失ったように白く、制服は土で汚れ、肌はところどころ擦り剥いて血が出ている。
「さっちゃん、布団とお水用意して。後布団にはシーツ敷いといて。大ちゃん、涼ちゃん布団まで運んでやってぇや。」
さつきは慌てて布団を敷きに走る。
青峰は黄瀬を肩に担いで慎重に歩く。
牡丹は二人が聴こえない程度に、夜の闇に向かって舌打ちをした。
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