夏色の恋

□どこの誰よりも
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夕焼けで綺麗な光が部屋を赤く染めた。
その夕日が綺麗でぼぉっと見とれているとピリッとした痛みが走る。
じとりと擦り傷に入り込む消毒液の感覚に痛いと思うがぐっと我慢をした。


「なに、よそ見してやがる」


不満そうにそう言う彼…御幸は俺が夕日に見とれていたことが気に入らなかったのか面白くなさそうに俺を見る。
何もそんな顔しなくてもいいじゃんかと思うがそう言えばこの男の事だからぐちぐち何か言うだろうとぐっと口をつむる。


「だいたいどうしたらこんな怪我するんだよ」

「どうしたらって……走ってたら?」

「普通に走っててこんな事なる訳無いだろ…」


そう言って擦り傷の部分にひんやりとした消毒液を垂らす。
痛いけど御幸がわざわざ俺のために傷の手当てをしてくれているのだと思えば不思議と痛みなんて消えた。
それだけ俺はこんな人に惚れているのか…そう思うと苦笑しか生まれない……

だけどどこかそれが嬉しくて御幸のそばにもっといたいとも思えた。


「なぁ、御幸…」

「ん?何だ?」

「俺さ、本当は見とれてたんだ」

「は?」


急に俺が主語のない言葉を言ったからか御幸は?マークを浮かべながらこちらを見る。
普段なら絶対こんなこと言わないけど今日は何故か素直になれた。


「……アンタが練習してるのに見とれてた…それしたら前見てなくて派手にこけて…」


素直に俺がこけた理由を言うと御幸はぽかんとした顔で俺を見る……
その顔が間抜け過ぎてなんて顔をしてるんだと言おうとしたがそれは御幸によって止められた。


「んっ…いきなりすんな…」


恥ずかしくて顔が赤くなるのが自分でもわかる。
御幸とのキスは未だになれなくてついつい怒ってしまう。


「悪い…お前が可愛すぎて…なぁもう1回していい?」

「はぁ!?だ、駄目に決まってるだろ!人来たらどうするんだよ!」


5号室には今は俺と御幸しかいないがいつ倉持先輩やら増子先輩が帰ってくるかわからない……
手当ぐらいならともかくキスしてるところなんて見られたら終も終わりだ。


「見せつけてやればいいだろ?」

「馬鹿か!」

「1回で終わるからさぁ…」

「…………本当に1回で終わる?」


用心深くそう聞くと御幸あぁと同意した。
いつもとは少し違ったこんな子供みたいなところも大好きでいつも仕方ないなとか言って許してしまう。
俺がそんな御幸に弱いところを知っててわざと御幸はそうしてるのかもしれない。


「……1回だけだからな!」

「ははは、やっぱお前甘いなー」

「さっきのやっぱ取り消し」

「冗談だって」


そう言って御幸の顔が近づいてくる……
顔が赤いまま目を閉じて待っているとやわらかい感触が唇に感じた。
こんなところを他の生徒に見られたらどうなるだろう。
もしかしてもじゃなくてもきっと気持ち悪いとか何とか言われるんだろうな……
でもそんなこと俺にとってはどうでも良かった。
この人と……御幸と一緒に入れるなら。


「ずっと……どこにも行くなよ」


御幸の服の裾を掴みそう言うと一瞬きょとんとしていたが直ぐに優しい笑顔であぁと一言だけ言った……



君のすべてが欲しい様に……君もそんな風に思ってくれら……そう願う自分は間違いなく馬鹿で馬鹿だ。
でも、そんな大馬鹿者でも……君が好きでいてくれたらそれでいい。


どこの誰よりも君が好きだ。






End

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