独奏の堕天使

□★七歳〜八歳編★到着
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〜ユウナレスカ対面後〜


「まだ間に合う、帰りましょう!」

アーロンがブラスカに向かって叫んだ。

「私が帰ったら誰が『シン』を倒す。他の召喚士とガードに同じ思いを味あわせろと?」

それに冷静に答えるブラスカ。

「それは……しかし、何か方法があるはずです!」

「でも、今は何もねぇんだろ?
……決めた。
祈り子には俺がなる。
ずっと考えてたんだけどよ……
俺の夢はザナルカンドに居る。
あのチビを一流の選手に育て上げて……
テッペンからの眺めってやつを見せてやりたくてよ。
でもな……どうやら俺達、ザナルカンドにゃ帰れねぇらしい。
アイツには……もう会えねえよ。
となりゃ俺の夢はおしまいだ。
だからよ、俺は祈り子ってやつになってみるぜ。
ブラスカと一緒に『シン』と戦ってやる。
そうすれば俺の人生にも意味が出来るってもんよ。」

ジェクトがアーロンのブラスカへの説得に答えた。

「自棄になるな!生きていれば
……生きていれば無限の可能性がアンタを待っているんだ!」

「自棄じゃねぇ!俺なりに考えたんだ。
それによ、アーロン。
無限の可能性なんて信じる歳でもねぇんだ俺は。」

「ジェクト……」

ブラスカがジェクトの名前を呼ぶ。

「なんだ、止めても無駄だぞ。」

「すまない……いや、ありがとう。」

「ブラスカには、まだ『シン』を倒すって大仕事が待ってる。
俺の分までレインと一緒にしっかりブラスカを守れよ!」

「っ……!」

悔しそうに下を向くアーロン。

「んじゃ……行くか!」

そのアーロンに背を向け言うジェクト。

「ブラスカ様!ジェクト!」

「まだ何かあんのかぁ!?」

「『シン』は何度でも蘇る!
短いナギ節の後で、また復活してしまうんだ!この流れを変えないと、二人とも…無駄死にだぞ!」

アーロンは説得を続ける。

「だが、今度こそ復活しないかもしれない。賭けてみるさ…」

「ま、アーロンの言うことももっともだ。よし俺がなんとかしてやる。」

「何か……策があると言うのか?」

アーロンがとても心配そうな目でジェクトを見る。

「ジェクト?」

ブラスカもまた、不思議そうな表情でジェクトを見る。

「無限の可能性にでも期待すっか!」

そしてジェクトはいつものように大声で笑った。

「あ……、」

……が、途中で笑うのを止めて、言った。

「少し、待っててくれねぇか?」

「うん、どうしたんだい?ジェクト。」

「ちょっくら、行ってくる。」

そう言うとジェクトは来た道を逆に走り始めた。


〜〜〜〜〜


「ふーっ、危ねぇ危ねぇ。
忘れちまうところだったぜ。」

ジェクトが向かった先はエボン=ドーム回廊。
そこで寝ているレインのところだ。

「あんなことしちまったら渡せるとは思えねぇからな。」

そう言うとジェクトは頭の鉢巻きとズボンのポケットに入っているネックレスを取り出し、レインに着けた。

「これが、俺からの誕生日プレゼントだ。
…………じゃあな。」

そう言うとジェクトはブラスカとアーロンの所へ走り出した。


〜〜〜〜〜


ジェクトは走ってブラスカの所に行ってこう言った。

「わりぃな!
………アーロン。
最後だ……少しだけ、良いか?
あのよ…、
わりぃ、やっぱ止めとくわ。」

何か頼みたそうだが言いづらくなるジェクト。

「いいから言えよ!」

「そうか、じゃあ言っちまうぞ!
…………息子をたのむ。」

「あっ……!」

「ザナルカンドのアイツを頼む。
アイツ……泣き虫だからな!
誰かついててやんねえと、心配で心配でよぉ……。
だからよ……頼むわ。」

「しかし、ザナルカンドなんてどうやって行けば……。」

「へっへへ、なんだよ。
なっさけねえな!
お前の言う『無限の可能性』ってヤツでなんとかしてみろよ!」

「……ああ!
やってやろうじゃないか!
約束しよう。
アンタの息子は俺が守る。
死んでも……守ってやる。」

「すまねえな、アーロン。
お前はカタブツ野郎だが……
そういうとこ、キライじゃなかったぜ。
っと、もう一つ。
レインの面倒もしっかり見てやれよ。
アイツは俺の娘第一号だからな!!」

「…………あぁ!!」

そして、ブラスカとジェクトはユウナレスカの待つ扉の向こうへ歩み出した。
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