独奏の堕天使
□★七歳〜八歳編★酔っ払い親父を止めろ
1ページ/2ページ
ジョゼの寺院でブラスカがイクシオンを仲間にした日の翌日。
私達は幻光河と言う場所に向かって歩みを進めていた。
いつも通り、皆――――
訂正、一人いつも通りでは無い人が居ました。
「ほ〜れぇ!早くしろよ〜!」
いつもはアーロンが前を歩くので先に突っ走る人は居ない。
つまり明らかに私達の中ではこんな事言いそうな人は居ない……がお酒の力は異常。
「ブラスカ、アーロン、あれは大丈夫なの?」
私は前方で突っ走る馬鹿(と言う名のジェクト)を指差し二人に問う。
年上を、ましてや大人を『あれ』扱いしている事には触れないでおこう。
「…………問題さえ起こさねば、な。」
「魔物も来ないから良いんじゃないかな?」
ブラスカとアーロンはいつもの表情(アーロンは無表情、ブラスカは穏やかな笑み)で答える。
因みに魔物は前方で酔っ払いが大剣振り回して全部倒して居るので一体もこちらには回ってこない。
「おらおらおらおらぁ!!!」
「…………」
オチューを一人で斬り倒す酔っ払いを私達は無言で見るしか無かった。
(絶対バーサクかかってるよ……これ。)
(駄目だな、これは。)
(いっそのこと眠らせた方が良いのかな?……でも運ばなきゃならないからね…)
「がーっはっはっはっ!!このジェクト様の前に立ちはだかろうなんざ1000年早いんだよ!!」
「「……はぁ。」」
三人の溜め息が綺麗に揃った。
〜〜〜〜〜
「なんだぁ!?でけぇ魔物じゃねぇか!!」
これからシパーフに乗ろう!……と言うところでジェクトが(多分酔っているせいで)シパーフを魔物と勘違いした。
普段のジェクトなら話をすれば解決しそうだが、なんせ今は酔っている。
絶対話をしても聞かない自信が私にはある。
「ジェクト、これは魔物じゃn「この俺様が退治してやるぜ!」a……」
「いい加減にしろ!」
ブラスカの説明も、アーロンの制止もジェクトの耳には届かず、ジェクトは大剣を手に取りシパーフの下に走り出してしまった。
位置の関係からしてアーロンではあれを止められ無い。
私はまたお使い(と言う名のパシり)をしていたのでシパーフの近くに居る。
となれば……
キィィン!!
ジェクトがシパーフに斬りかかった瞬間、私は咄嗟に一人と一匹(一体?)の間に入りジェクトの大剣を私の片手剣で受け止める。
周りに居た人達は行きなりの事に驚き、逃走を開始し始めた。
「「クロヤ!」」
「せっ、セーフ……」
取り敢えず止められた。
だがこのまま押し合いになっても不利なのは私。
どうしよう、気を抜いたら倒される…。
「んだよ、また魔物かよ!」
「!!」
ジェクト、酔いすぎて頭がおかしくなってる。
この言葉に少しショックを受けてしまった私は剣を押さえている力が少し弱くなる。
ジェクトは先程から全力と言って良い程の力なのでただでさえ押されていた私はジェクトに倒されてしまった。
そして、その時に
ザクッ
「っ―――――」
「クロヤっ!」
ジェクトの大剣が私の右足を切った。
直撃ではなかったので切断はしてないが服は破け、股からはかなり出血している。
「ジェクト!お前、何をしているのか分かっているのか!!」
「あン?魔物退治だってーの。」
アーロンの問いに答えたジェクトは私に向かって大剣を突き刺そうとする。
それを私は痛む足を右手で抑えながら左に転がって避ける……が。
ザクッ
「っ――ぅああ!!」
今度は右腕が切られてしまう。
結構、いやかなり痛いです。
私は右足を右手で、右腕を左手で押さえながら傷口が開かない様にゆっくりと立つ。
立てたは良いが足が痛みで震えている。
「ジェクト・・・止めて・・・」
私は左手でいつも以上に重く感じる愛用の片手剣を拾いながら震えた声で言う。
「チッ、まだくたばんねぇか……」
「…お願い…………」
そしてジェクトは剣を一振り。
ザクッ
ジェクトは私の右頬とシパーフの右足を切り裂いた。
私は元からフラフラしていたのでその勢いで倒れてしまう。
シパーフの耳をつく鳴き声と共に右の頬が痛みで熱くなっていくのがわかる。
その直後
「この酔っ払いが!!」
ガツッ
アーロンの強烈な大太刀の一撃(峰打ちです)がジェクトの頭に直撃。
ジェクトは気絶した。