独奏の堕天使

□★七歳〜八歳編★アオイウミ
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寧ろ周りの物が全て止まっていて、私だけが動いているだけのよう。
……訂正、バハムートと私だけのようです。

「バハムート……?」

『うん、僕はバハムートの祈り子だよ。』

祈り子さんでしたか。って……

「えぇ!!?いいいい祈り子ってあの寺院に居るっていう!?」

『うん、僕はベベルの祈り子だよ。』

……頭痛くなってきたよ。

「で、本日は祈り子様がどんなご用件で?」

何でこんな事をしているのか知りたい。
その前に召喚獣って話せるの??

『用は特に無いかな。ただ君は召喚士としての素質がとても高くて、僕達と話せる見たいだから知っておきたくってね。』

「特に無いのにこんな事したの!?」

召喚獣ってこんなにフリーだったんだ。
……ん?ちょっと待って。

「召喚士の素質?そんなもの私に有るわけ無いじゃん、私はザナルカンドから来たんだよ。」

私は召喚士とは無縁のザナルカンドから来た。
その私が召喚士?出来るわけがない。

『素質は出身と関係ないからね。たまに話そうよ、僕達暇なんだ。』

祈り子様がこんなんで良いのかな?

『いや、良くないと思うよ。』

「内心読まないの!」

『じゃあ、戻すよ。話は言った通りに出来るからね。』

バハムートの祈り子がそう言った直後硬直が解けたかの様に周りが動き出した。

「レイン、初めて召喚獣を見た感想は?」

動き出した瞬間ブラスカが私に声をかけて来る。

「え、あー…頼りになりそうだなーって。」

不意打ちだったのでかなり曖昧な答えになってしまた。
だが、頼りになりそうなのは事実である。

「何かあったのか?」

「ぬ…………」

アーロンが鋭い質問を突きつけてくる。
ここでこのような事を言っても良いのだろうか。

『今は、ダメだよ。』

私の思考よりも先にバハムートが答えを出してくれました。
と言う事なので

「いや〜、カッコイイなーってボーっとしてたらいきなりブラスカが聞いてきたから…ねぇ。」

「本当か?」

アーロンさん、しつこいです。
しつこい男は嫌われちゃうよ!

「まあまあ、そんなに聞くようなことじゃないよ。」

「しつけーと嫌われちまうぜ?」

ブラスカとジェクトがアーロンを止めるような言葉を言う。

「…………はい。」

アーロンが反発せず、引き下がる。
諦めは大切だよ!

「さて、もうそろそろ日が暮れる。宿舎に行って休もうか。」

「そうだな!」

「さ〜んせ〜い!!」

ブラスカの提案に私とジェクトは賛同の声を上げる。
確かに、もう空は赤を通り越して紫色に染まっている。
そんな空が私達四人を写し出していた。

〜〜〜〜〜

その日の夜、私は寝れないでいた。
ベッドに入っても眠気が来ず、唯ボーッとしていた。
私は気晴らしに海に行くことにした。
路中の魔物を両手で持った片手剣で叩っ斬りながら進んでいく。
緑が茂っている道とは呼びがたい道を抜けて海に出た私は砂浜に座った。
ザナルカンドやベベルと違い明かりが少ないため、空には目を疑う程の星が海を輝かしていた。

「……」

見馴れたザナルカンドの海とはまた違うビサイドの海を唯、眺めていた。
この海は私の知るザナルカンドに繋がっているのか。
ブラスカの旅が終わる時、私は帰らなきゃいけないのか。
ジェクトはやはり帰ってしまうのか。
そんな事を考えていた。

「なーにしてんだよ。」

「!!」

いきなり後ろから聞こえた声に私は驚く。

「別に……」

「なんだ?寝れねーのかよ。」

振り返り、見てみると声の主はジェクトだった。

「海、か。」

「綺麗……だね。」

「ザナルカンドじゃ、違う明るさがあったからな。なんか、こう…新しく思えるな。」

「うん。あそこ、星があまり見れないしね。」

この様な会話をしていたら海の向こうが少し明るくなってきた。

「レイン、」

「なに?」

「いつか二人で帰るぞ、ザナルカンドによ。」

「………うん。」

この海辺の約束が果たされるか、今は誰も知らない。



【おまけ】
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