独奏の堕天使

□★七歳〜八歳編★事前準備
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「???ねぇ二人共、私を振り回そうとしてない?」

会話の内容からして、完全に振り回されそうである。

「安心しろ、少し叩き込むだけだ。」

「無茶はさせないから大丈夫だよ。」

「いやいやいやいや!!叩き込むって何を!?無茶って!?」

何をさせる気なの!?この二人!!全く持って話が読めないし、訳が分からない。

「素質とか見て、あるなら簡単な魔法を覚えてもらうだけだから。」

「俺は剣の構え方と振り方、早く進めば多少技も覚えてもらう。」

二人の目的はこうだったのか。
確かに今のままでは三人に迷惑をかけてしまう。それは避けたい私には良いチャンスだ。
自分の身は自分で守らなきゃ駄目。

「お願いします!!」






アーロンはジェクトの様子を見に行くため、一旦別れた。
そいて今、私はブラスカと一緒に兵士の訓練場の様な所に居る。
ブラスカが言うには魔法の素質が有るようで、少し練習すれば簡単な魔法はすぐに使える可能性が高いらしい。私はブラスカにお手本を見せてもらったので実際に試す所である。

「さて、まずあの人形に意識を集中してみてくれ。」

「はい。」

私はブラスカに言われた通り7、8m先の人形に意識を集中させる。

「そうそう、そしてさっき私が見せたのをイメージして唱えるんだ。」

コクリと頷き私は先程のブラスカのサンダーをイメージする。
軽く雷が落ちていく感じ。
そのイメージが固まってきたところで私は唱えた。

「『サンダー』!」

そう唱えるとブラスカの手本と同じ様に人形に雷が落ちていった。

「凄いな、一回目でこの威力か。他のもやって見るかい?」

「はい!!」

ブラスカに褒められて上機嫌になった。その後、様々な魔法の解説をして貰い、実践したところ、スムーズにファイア、ウォータ、ブリザド、ケアル、エスナも使えるようになった。
私は、普段とは少し違う疲労を感じながら、そろそろ休憩しようと座った。

「レイン、この本をあげるよ。」

「え?」

どこから取り出したのか分からないがブラスカが私に二冊の本を差し出してきた。

「黒魔法は私の専門外でね、これ以上教えるのは少し難しいんだ。だからこの本でコツとか掴んでくれると嬉しい。」

片方は黒魔法の本らしい。
そうなると気になるのはもう一冊の方。

「もう一冊は?」

「白魔法の本だよ、やっぱり教えるのは苦手でね。」

成る程、分かりやすかったけどこれからはイメージをこの二冊で掴んでくれ、と。

「うん、ありがとう!!」

私は素直に礼を言った。そこにアーロンが訓練場に入ってきた。
ブラスカはアーロンの方に歩いていって、少し話をした後私に「私はジェクトの所に行ってくるよ、娘の顔も見たいからね。」と言って訓練場から出ていってしまった。

「さて、時間が押している。基礎をやるから一回で覚えろよ。」

その後私はアーロンにみっちり剣の基礎から多少の応用、一部の技(パワーブレイクとメンタルブレイク、何故このチョイスなのかは分からない。)を教えてもらった。
実にスパルタでした、はい。結構熱が入ってましたよ。休憩無しの一時間、あれっ?目から汗が…

「これだけやっても一時間強、かなりの腕だな。」

「そう?」

「あぁ、普通は1日かかる量だ。」

何か衝撃的な事を言われたような気がした。きっとアーロンがスパルタな所為だよ、そう信じる。

「そろそろ十二時だな、戻るぞ。」

「……あのさ、どうして私とブラスカでは話し方が違うの?」

私は少し気になっていた事を聞いた。ブラスカの時はかなり丁寧なのに私とジェクトと話すときはなんか…刺々してる様な感じがするから。

「それは、昔からの癖見たいな物だ、気にしないでくれ。ブラスカ様も敬語は止めてくれと言っているんだがな。」

「そうなんだ。」

「ほら、飯に行くぞ。」

「え、もうこんな時間なの?」

「あぁ、置いていくぞ。」

「ちょっ、待ってよ!!」

私はアーロンの歩くペースが案外早く、置いてかれないように必死に追いかけた。ブラスカとジェクトに合流した時、私はくたくたになってしまっていた。







皆がご飯を食べ終わったのと同時にジェクトが私に向かってこう聞いてきた。

「レイン、腕試しだ。俺と一回やんねーか?」

え、ちょ、ちょっと待って、まだ全快じゃないよ。
私はかなり焦った。
まだ疲れが取れていないこの状況、絶対完敗する。

「良いんじゃないかな、二人には一回本格的に戦闘をしてもらいたいからね。」

ブラスカがなんとジェクトを後押ししてきた。

「えっと……」

私が否定の言葉を言おうとした時、

「一回やってみろ、予行練習だ。」

なんとアーロンまで進めてきた。三人とも顔がニヤけてる、はめたな!グルだな!!
こうなったらジェクトに八つ当たりしてやる!!

「…分かったよ、ちょっと疲れているから三十分後が良いな。」

私は半場自棄になりながら答えた。
先程言った通り、魔法とアーロンのスパルタ剣術教室での疲労がかなりあるので、休憩が欲しい。

「おっ、やんのか。んじゃ三十分後グレートブリッヂでな。」

勝手に場所を決めたジェクトは食器を片付け、その場を去って行った。
私はそれまでに貰った二冊の本を少しでも良いから読まなければ。と、思ったが…

「レイン、これを読んでおけ。」

「あっ、ありがとう。」

「なんだ、迷惑だったか?」

「全然!!」

アーロンから渡されたのは剣術の本。
どうやら白魔法は一先ず置いといた方がよさそうだ。
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