短編集

□海の向こうへ
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「はぁ……」

俺は秩序の聖域付近にある湖の近くに居る。
勿論この場所は誰にも教えてない、教えるものか。
一人で考え事をするために見つけたからな。

ちょっとそこ、俺が考え事しないと思ってるの?

何故か知らないけど、この場所の近くにはイミテーションも出てこない。
だからシールドとか着けなくても大丈夫。

そして、そのまま俺は湖に入り、深いところまで泳ぐ。
冷たい水の感触が俺の存在を確かめられる。
今朝見た夢…と言うより俺の記憶を思い出した。





「君が夢を見て居るんじゃない、君が夢なんだ。」





「ああ、俺も死人だ。」





「だいっきらいだ……」





「俺…消えっから!」





ザナルカンドやスピラの旅の初めの方の記憶はもう戻っていた。
だが、中盤以降の記憶は曖昧で最後の方なんてあるのか無いのかわからないくらいだった。
けど、思い出してしまったんだよ。
ずっと側に居た後見人が死んでた事も。
親父をこの手で殺したことも。
大切な故郷を消したことも。
自分が存在しないことも。


そして、俺は知ったんだ。
この戦いの終わりが自分の本当の最期になることも。





「嫌だ。」




何もいない湖の深いところでしか言えない本音。



「嫌だ、消えたくない。まだ皆と生きたい。」



誰にも届かない思いは目から零れ湖の水の一部となる。




「リュック、キマリ、ルールー、ワッカ、アーロン、ユウナ。」




会いたいよ、すっごく。
また消えるのが怖いんだ。




「ティーダ!!」


陸の方から俺を呼ぶ声が微かに聞こえる。

ああ、行かなきゃ。

もうそろそろ最期の戦いが始まる。
重い体を動かし、俺は湖から出た。
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