独奏の堕天使
□▼アーロン編▼届いた願い
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〜アーロンSide〜
恐らく『シン』の再生に幻光虫を使っているのだろう、魔物は道中殆ど遭遇しなかった。
まさにスピラが作り出す厄災…という事か。
それはザナルカンドに行っても同じだった。
つい先程まで見えていた幻影が一つも現れなくなっていた。
何にも止められることなく俺はひたすら先に進む。
辿り着くはエボンドーム。
前見た時よりも薄暗く、壮大な威圧感を放っている。
このまま飲み込まれて戻ってこれなさそうな暗い闇が口を開いている気がしてならない。
それでも俺は進む、進まなければならないんだ。
「今更何をしに来たのですか?」
大広間から先、魔天で俺は目的の人物と再び会うことが出来た。
会う事など無いだろうと思っていた女に。
「何故…ジェクトが!」
「ふふ、いつもの事です。
『シン』は…不滅。
『シン』を倒した究極召喚獣が新たな『シン』へなりかわり…必ずや復活を遂げる。
ジェクトと言いましたね、彼もまた同じ。
エボン=ジュに精神を蝕まれながらこの先、誰が此処で究極召喚を手にし、倒されるまでひたすら『シン』としてスピラを壊すのです。
『シン』はスピラが背負った運命…永遠に変えられぬ宿命です。」
「永遠に…だと?人間が罪を全て償えば復活は止まるはずだ!いつか…復活が止まるのでは無いのか!?」
「人の罪が消える事などありますか?」
「っ!!」
ユウナレスカは当たり前だと言った表情で語った。
その表情が尚更俺の中のストッパーにヒビを入れていく。
「答えになっていない!!罪が消えれば『シン』も消える…そうエボンは教えてきたんだ!!
それだけが…この世界の希望、生きる者たちの希望だ!!」
「希望は…慰め。
悲しい定めも諦めて、受け入れるための力となる。」
「っ、ふざけるな!!!
唯の気休めではないか!!
ブラスカは教えを信じて命を捨てた!
ジェクトは…ブラスカを信じて犠牲になった!!」
「信じていたから、自ら死んで行けたのですよ。」
まるで歌うように、決められた舞台を演じるように言うユウナレスカに俺のストッパーは音を立てて崩れ落ち、消え去った。
「うあああああああ!!!」
太刀を構えユウナレスカに斬りかかる。
先の事なんてどうでも良かった。
ただ、こいつはこの世界に居させてはならないと思った。
後少しと言ったところだろうか、ユウナレスカは魔法を使い…俺を弾き飛ばした。
正確には斬り飛ばした。
綺麗に魔法の刃は俺の右眼や身体の各部を切り裂きそのまま俺は後方に吹き飛ぶ。
後頭部から落ち、そのまま意識が薄れていった。
まだ…俺は…
何も果たせてない…