独奏の堕天使
□★七歳〜八歳編★旅立ちの時
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「お〜い、レインー。零時だぜー!」
牢で寝ていたらジェクトが起こしに来た。
「後…十分〜。」
寝ぼけている私は睡眠時間を延ばしてもらおうと我が儘を言う。だが、その願いは虚しく、
「ジェクト、早くレインを起こしてくれ、出発が遅れる。」
「わーったよ。ほーれ、起きねーとここに置いてくってよ。」
アーロンの介入によりジェクトが強行手段にでた。
何をしたのかと言うといきなり牢に入ってきたかと思えば何処からか出したブリッツボールを私の頭上に落としてきた。
「イテ……」
いつも通りなら取れただろうが何せ寝起きだ、私はボールを頭に受けてしまった。
「何をするぅ〜!」
「文句言うなら飯と荷物の準備をしてからにしろ、着いていくなら時間は守れ。」
外にいるアーロンが口を出す。
その前に、
「荷物の整理は終わってるからね!昨日ちゃんとやってから寝たんだから!」
唯の言い訳ですよ!そう言いながら私は牢の隅に置いてある鞄を指差す。
「寝坊しても間に合うようにちゃんと考えたんだからね!」
「良い心構えだが寝坊しては意味はない。」
ぐさりと何かがレインに刺さる。
「うぅ……」
「ほれ、軽く飯食うぞー。」
「はーい。」
その後、私は軽食を取り一旦荷物の最終確認をしに牢へ戻ってからグレートブリッヂに行った。そこには既に出発の準備が整ったであろう三人が私を待っていた。
「しっかしブラスカよぉ、『シン』と戦うショーカンシ様の出発だってのに…これじゃあなんだか夜逃げみたいじゃねぇか。」
確かに、こんな夜中に出発するとは…夜逃げだと思われても仕方がないかも知れない。
実際は逃げていないのだが。
「これでいいさ。見送りが多すぎると、かえって決意がにぶりかねないからね。」
前言撤回、見送りからこの人逃げてました。
そんなことをニヤニヤしながら考えていると…
「レイン、どうした。」
アーロンがやって来ました、一体何を察知したのでしょうか。
「いや、どうもしてないけど…」
「思いっきりニヤついていたろ?」
「うっ……」
「…何を考えていた。」
私はそのまま言うと怒られそうな気がしたので、言い訳を考える。
「いや〜ちょっとあっちの友達を思い出してね…」
あっちの友達…
私にはザナルカンドに居たときたった一人だけ友達と呼べる少年が居た。同い年で、泣き虫で、自分の父親を嫌っている子だった。私はその子の愚痴を聞いたり、ブリッツの練習をしたりしていた。最後に会ったのは飛ばされる前日だったかな…
その子の名前は知らない、聞いてないし、聞こうと思わなかった。聞かなくても良い気がしたから、だからお互いに名前を知らない。
そんなこと今は関係無いんだけどね。咄嗟の言い訳ですよ、はい。
「なんか、こう…ジェクトと似てるーって。」
「……帰りたいか?」
いきなりアーロンがザナルカンドの話をしてくる。それに対して私は即答で
「別に。」
と答えた。
アーロンは複雑そうな表情で私を見た。
それはそうだろう、何せ子供が自分の家に帰らなくても良いなどと言ったんだ。納得出来たり、落ち着いていたらおかしいのかもしれない。
「だって、帰ったって私の事を待ってくれるのはあの子だけかもしれない。あの子が居なかったら私はザナルカンドに居ないも同然だから。だからここに来て私は嬉しいのかも知れない、ブラスカが…私を必要としてくれたから。」
絶対「何故だ。」とか言うと思うから先に理由を話す。
そして帰ってきたのは意外な言葉だった。
「レイン、お前…何歳だ?」
「女性に年齢を聞くとは失礼ね、七歳よ。」
「七歳って事はあのガキ同い年ってことか。」
「ユウナとも同じ歳なのか。」
話を終えていたジェクトとブラスカが会話に入ってくる。
「言っとくけど、それを理由に置いていったら怒るからね!」
「ふふ、分かってるよ。ここまで巻き込んだんだ、今更置いていかないよ。」
「だよね。」
「さーってと、出発すっか!」
「貴様…ふざけているのか?」
何故アーロンがジェクトに対してさりげなくキレているのかと言いますと、ジェクトがスフィアで色々撮っていた。
「ふざけてねーよ、コイツはガキと女房への土産にする。」
「遊びでは無いんだぞ!!!」
アーロンさんマジギレしてますね。
そこにブラスカが
「良いじゃないか、大切な妻と子供の為だろう?」
「しかしっ!」
「アーロン。」
「……すいません、取り乱してしまいました。」
と、アーロンを抑える。
アーロンを抑えられるのは貴方だけですよ、はい。
「さて、見つかる前に出るとするか。」