怪盗クイーン

□神と信じない者への讃歌
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モロッコに着いたクイーンとジョーカー。早速、約束の場所へと向かった。だがその時だった。油断してたせいか、あの十字架を砂の上に落としてしまった。
「おっと。」
クイーンが十字架を拾おうとすると、急に砂嵐が起きた。
「うわっ!」
思わず目を瞑ってしまった二人。
そして砂嵐が過ぎ去ると、クイーンは、あっ。と言った。
「……大変だ、ジョーカー君。十字架が、消えた。」
「!?」
慌てて辺りを探す二人。こんな事なら、十字架に発信機でも付けておけば良かった。と思ったクイーン。そうすれば、RDが簡単に見つけ出してくれるのに。
「……どうします?」
「掘っても出て来ないし…。よし、諦めて帰ろう。」
「何言ってるんですか!世界を操れる程の力がある代物ですよ?!失くして、それを他の人が見つけたらどうするんですか!」
怒りの収まらないジョーカーは、クイーンにガンガン言っていた。耳を手で塞ぐクイーン。
「だって、今の砂嵐で何処に行ったか分からないし…。無駄な力は使いたくないし…。」
「…はぁ。仕方ありません。ICPOが来るまで、待ちましょう。」
二人はその間も探していた。


暫くして、ヴォルフと仙太郎が姿を現した。だが、二人の異様な光景にぽかーんとしている仙太郎。何をしてるんだろう。
「…おいクイーン。何してる。」
仙太郎はヴォルフの声で、はっと我に返った。
「いやぁ、約束の十字架を、さっきの砂嵐で失くしてしまって…。」
はっはっはー。と笑うクイーン。ジョーカーは隣でクイーンを睨み付けていた。
「はぁ!?てめぇ、何考えてんだ!」
「だっだって仕方ないだろう?砂嵐は、急に来るものだよ。」
「…見逃してやるから、今は帰れ!俺達が探す。」
「はっ!?ちょっ旦那!」
「文句言うな仙太郎。その十字架を探し出さねぇと、世界が終わるぞ!」
クイーンとジョーカーは、足早にその場から去った。
「大丈夫ですかね、任せて…。」
「大丈夫だろう。あの二人は優秀だ。それに、ICPOの人間だよ?問題は無い。…筈。」

ヴォルフと仙太郎は、闇雲に砂を掘っては…の作業を繰り返していた。
「旦那ぁ、無理だって…。こんな砂の山から探し出さすなんて…。」
「…なら、大人しく帰るか?世界がどうなっても良いのか?」
「…。」
仙太郎は、ため息を零し、仕方ないと思いながら、また砂を掘ったりしていた。


日も暮れ始めて、ヴォルフはこりゃ無理だな。と言った。
「夜になったら、掘ったとしても見つからねぇ。…どうするか。」
「ICPO全員に頼んでみたら?」
「馬鹿野郎。誰がその十字架の話を信じる。俺達は、クイーンを追っかけて何年も経っていれば、クイーンが嘘を言わない事ぐらい知っている。ましてや、そんな危ねぇもんを俺達にわざわざ渡す程の物だ。他の奴らに言ったら、そいつらが使うかもしれねぇだろう。」
「…まぁ、ホテルベルリン以外の人間は、信用出来ないもんな。…にしても、夜の砂漠は、危険だぜ?一旦戻ろうぜ、旦那。」
「…だな。」
二人はそこから立ち去った。


夜の月が、砂漠を照らす頃。
砂漠を歩く一人の青年が、キラリと光る物体を見つけた。
「…?何だこれ。」
その物体を手に取る。そして、それが何なのかを、考えていた。
「何でまた、砂漠に十字架何て…。」
金になるかもしれないと思った青年は、その十字架をポケットに仕舞い込んだ。

青年は宿屋に宿泊していた為、宿屋に帰って、改めてその十字架を見つめていた。その時であった。十字架から声が聞こえたのだ。
「…えっ?」
その瞬間、青年の意識は途絶えた。

「やっと、人間の器を手に入れた。それも…この十字架の正体を知らないやつの所に。」

青年は起き上がると、宿を出た。
荷物は、置いたままであった。
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