怪盗クイーン

□神と信じない者への讃歌
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朝のコンビニは、戦争だ。そんな事を考えながら、花菱仙太郎は、レジの対応に必死であった。
「合計で、589円になります。」
慣れた手つきで、レジを使う仙太郎。そんな時、電源を切るのを忘れていた携帯電話のバイブが、ポケットから振動を受け、ぶるぶると鳴っていた。仙太郎は、やば。と思い、一旦レジを他の人に任せ、事務室へと駆け込んだ。そして、電話に出た。
「はい、もしもし。」
『もしもし。じゃねぇよ。お前、今何処に居んだ。』
「……ヴォルフの旦那?何?朝から?俺忙しいんだけど?」
『ふざけた事抜かすな。仕事だ、仕事。お前と俺でってルイーゼが言って来てんだよ。』
「………俺、今仕事中なんだけど。」
『ほっとけ。そっちの仕事何て。そっちよりも、こっちが優先だ。迎えに行くから、支度してろ。』
一方的な電話は、プツリと切れた。仙太郎は、やれやれと言う感じで、携帯をポケットにしまった。そして慌てて表へ出て、ヴォルフが来るまで、仕事をしていた。



ヴォルフが来るのは遅く、電話から4時間しての事だった。店内に居る客数も、何人かの程度まで落ち着いていた為、これなら出ても大丈夫だと思った。
「ほら、行くぞ。」
「はいはい。」
仙太郎は着替えて、ヴォルフの後を追った。
「そう言えば、肝心の仕事内容について、聞いていないんだけど……。」
「クイーン絡みだ。」
「結局かぁ〜……。」
予想はしていたが、まさか本当に、クイーンだとは、思わなかった。何故、クイーンは俺達を惑わすんだろう。と思っていた。
「で、今回のクイーンの狙いは?」
「さあな。」
「さあなって……仕事来たんじゃ……。」
「予告状は届いていない。だが、クイーンから一通の手紙が来たんだよ。」
そう言ってヴォルフは、手紙を仙太郎に渡した。
「何々……。『親愛なるICPOの諸君。私が今手にしているお宝は、世界を揺るがせるものなのだよ。その代物の隠す場所を探すか壊すか、どちらかの選択肢を選んでくれたまえ。明日の夕方に、ここに来てくれ。』……もしかして、俺達クイーンの我が儘に付き合わされてるだけって事?」
「この文章を見る限り、そうだろうな。だがそんな事はどうでも良い。その、世界を揺るがせる程の宝を、俺達にどうにかして欲しいと言う内容が、気になったんだよ。」
「はぁ……。」
その手紙には、指定された場所が書かれていた。今から、仙太郎とヴォルフは、そこへ向かう事になった。
「………モロッコ?って、また砂漠かよっ!」
「人が少ない場所を選んだんだろ。やばい物なら、尚更人が居ない方が有り難い。」
空港へと向かう二人であった。




その頃クイーンは、金庫に入れた十字架を取り出し、部屋でそれを見つめていた。
「ICPOには、手紙も出したし……。後は、彼らが何とかしてくれるだろう。」
十字架を見つめて、そう思っていた。その時、部屋にノックの音が響いた。
「なんだい?」
「ジョーカーです。入っても大丈夫ですか?」
「ああ、良いよ。」
素直に「入って良い。」と言われた事があまりにも珍しく、ジョーカーはキョロキョロしながら、部屋に入った。
「………初めてですね。僕を部屋に入れてくれるなんて。」
「……まぁ、たまにはね。」
ふと、クイーンの手元を見つめた。ジョーカーも、ICPO向けに手紙を出したのは知っている。だからこそか、その十字架が気になった。
「……彼らなら、壊してくれますよ。」
「そうだと良いんだけどね。」
クイーンの頭の中では、これが良からぬ連中に取られる事が、気になって仕方が無かった。有り得なくは無い事だ。いつ、どこで出会うか分からない。だから指定場所を、砂漠にしたのだ。
「これで砂漠は、3回目ですね。」
「……だね。最初はピラミッドキャップ。次はマイクロチップ。……今度は十字架。」
「……正直僕は、もう砂漠には行きたくありません。あんな、嫌な思いをするのは、もう……。」
ぎゅっと己の拳を握るジョーカー。クイーンを、危険な目に遭わせたくない。そう、いつも思っている。
「大丈夫だよ。今回は、渡すだけだ。」
「………それで、事が片付けば、良いんですけど……。」
ジョーカーも、少しは気にしていた。その十字架が、誰かに撮られてしまうのではないかと言う事。
「……RDの所に、戻ろうか。そろそろモロッコに着くしね。」
クイーンは、十字架を握りしめて、部屋を出た。ジョーカーも、続いて部屋を出た。
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