怪盗クイーン

□絢爛豪華な王冠と首飾りは新たな出会い
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午前11時。ヴェルサイユ宮殿は開館された。クイーンとジョーカーは、一足先に二人の警備員を捕え、眠らせて、その警備員に化けていた。二人が任せられた場所は、運悪く場外の警備であった。
「………もう少し、ちゃんと相手を見て、行動を行った方が良さそうだったね。」
「そうですね。外じゃ、盗み出すチャンス何て……。」
自分たちが居る場所は、門の所。怪しい人物がヴェルサイユ宮殿内に入る事を、未然に防がなければならない。
「……………あれ。」
「?どうしました?」
「前から来る馬に乗っている男。昨日の……。」
「………運が悪いですよ。どうしますか?」
「……………。」
絶対に、彼の名前や位を呼ばなければならない。そんな情報、ある訳もない。
「ジョーカー君。適当にやるしかなさそうだね。」
「はい………。」
その馬が、此方に近付いて来た。
「異常はないか?」
「はい、今の所、何もありません。」
先に喋ったのは、ジョーカーだ。
「よし。このまま警備を続けよ。」
「はい!」
そしてその馬は、ヴェルサイユ宮殿へと入って行った。
「………怪しまれませんでしたね。」
「全く。君の演技力には驚かされるよ。」
「変装したら相手になりきる。それは、貴方が僕に教えてくれたことですよ?」
「……………そうだった。」
二人は身を引き締め、展覧会が終わるのを、ただ待った。




展覧会は、たった1時間程で終わったようだ。他の警備員達が、二人を呼びに来た。
「今日の展覧会は終わりだぜ〜。片付けに手伝ってくれ。」
来た。二人は目を合わせて、そうアイコンタクトを取った。



幸いな事に。あの指揮官のような男は、廻廊には居なかった。二人は持っていた催眠スプレーを廻廊全体に撒いた。自分たち以外が眠った事を確認すると、硝子のケースを取って、中から王冠と首飾りを手に取った。
「………美しい輝きだね。」
「ですね……。」
こんなに美しかったのか。クイーンは首飾りに夢中になっていた。
【二人とも。早くトルバドゥールに戻って下さい。】
「ん、あぁ。」
王冠と首飾りを持ち、二人はヴェルサイユ宮殿を後にした。





「なっ何だこれは!!」
此処の警備を任せられていた男が、その光景を見て驚いていた。
「おい、何があった!」
倒れていた警備員の男を揺さぶって起こした。
「大佐……。警備員の二人が、突然何かを撒いて………。」
「催眠スプレーだな。……………やられた。」
甘かった。まさか盗まれるとは……!自分が、甘かったせいだ。彼は自分を攻めていた。
「……まさか。」
あの時の、門の警備をしていた二人だったら?変装をしていたら?彼は慌てて鏡の廻廊を後にした。


トルバドゥールに逃げ込んだクイーンとジョーカー。
「いや〜、今回は簡単だったね。」
「そうですね。時間もあまり掛かりませんでしたし。」
【いつもこうが良いんですけどね。】
RDの愚痴を無視して、クイーンは首飾りを見つめていた。
「……………。」
「それにしても、凄い程の宝石ですね。」
「その王冠かい?」
「はい。………決して今では作れない程の宝石の数ですよ。」
「………こちらの首飾りも、凄い。此処まで作れるものなのかね。」
【その首飾りは一度バラバラにされました。けど当時の貴族が、また復元したそうです。それに費やした費用は、10億ほどだそうです。】
「ほーう……。」
それは、世界の怪盗が目を付ける事だろう。だがもう怪盗クイーンが盗み出してしまった。
【……………しかし。】
「RD?」
【その王冠には幸運が訪れて、首飾りには不幸が訪れる。そう言われています。】
それを聞いたクイーンは、首飾りをテーブルの上に置いた。
「クイーン?」
「私は迷信何て信じないが、これには、………。」
しばし、沈黙が流れた。



「さて。これを返して来よう。」
「え?」
「だって、不幸なんか要らないからね。」
「………クイーン。返すのは盗むより難しいんですよ?」
「大丈夫。考えはあるさ。」
そう言ってクイーンは、トルバドゥールから出て行った。それを追うジョーカー。




クイーンは、堂々とヴェルサイユ宮殿の庭園に現れた。変装もせずに。それに気付いたのは、あの時の警備員の指揮官だ。
「……。」
あえて何も話しかけない。だが彼は、クイーンから何かを感じ取っていた。
「そこのお客様。」
「何だい?」
「もう直ぐ閉館のお時間です。庭園は広いため、そろそろ退場を……。」
「ああ、すまない。」
クイーンと彼の距離は、噴水一つ分であった。噴水の向こう側に、クイーンが居た。クイーンはそっと首飾りをその噴水の中へと落とした。
「それじゃ、頑張ってくれたまえ。警備員さん。」
クイーンは足早に庭園を離れて行った。彼が行ったのを確認すると、彼はクイーンが立っていた場所へと移動する。そして、噴水の中を見つめた。
「これはっ!」
慌てて噴水の中に手を入れて、首飾りを手に取った。
「あの男、一体……。」
首飾りを返した理由は、彼も知っていた。その首飾りを持って、ヴェルサイユ宮殿の最高幹部の所に向かった。




「ジョーカー君。さて、変装をしてから、フランスを満喫しようか。」
「はい。」
ジョーカーとは、ヴェルサイユ宮殿から離れた場所で待ち合わせをしていた。ジョーカーがクイーンの意見に賛成したのは、珍しくクイーンが怪盗としての役割を成功させたからだ。
「やはりフランスと言えば、フランス料理だろう。早速食べに行こう。」
「はい。」
二人は、観光客と言う設定で、フランスの街を歩いた。
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