怪盗クイーン

□神と信じない者への讃歌
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ふふふーん♪と、テンションが高いクイーン。衣装部屋に入り、今までに着た変装用の衣装の整理をしようとしていた。
「これは……懐かしいね。」
手に取っていたのは、ジョーカーと出会った時に着ていた服であった。
「思い出深いから、捨てない。」
そう言って、元にあった場所に戻した。そして次の衣装を取った時、何かが転がり落ちた。おっと、と言い、クイーンはその落とした物を拾った。
「……これは。」
拾ったのは、十字架であった。それも質素な十字架である。この分だと、カトリックではなく、プロテスタントの物だろう。クイーンは、何故このような物があるのか、疑問に思っていた。
「……私は、神なんて信じていないしな……。」
1人、うーんと悩むクイーン。その時だ。ふと、ある事を思い出したのだ。
「…まさか。」
クイーンはその十字架を握りしめると、衣装部屋から慌てて出た。

向かった先は、リビングであった。

リビングでは、RDとジョーカーが熱心に新聞を読んでいた。RDはそれに対し、何か言っているようであった。
「二人とも!聞いてくれ!」
「……何ですか?」
[どうせろくでもない事でしょう?]
「酷いな!」
普段の生活っぷりを見られている以上、変にリアクションもしてくれない二人に対し、クイーンは少し、しょんぼりしていた。
「とにかく、聞いて欲しい!これを見つけたのだよ。」
先程拾った十字架を、二人に見せる。
「……ただの十字架じゃないですか。」
[ああ、この前のお宝ですね。]
この前、クイーンは数々の財宝を盗み取っていた。その時の物だと、RDは瞬時に理解した。
[それが、何か?]
「すっかり忘れていたよ〜。これを持っているとね、不幸が訪れるって言う事を。」
それを聞いたジョーカーは、クイーンからぱっと十字架を奪うと、窓から外に向かって捨てようとしていた。クイーンは慌ててそれを阻止した。
「何故捨てないんですか!」
「待ってくれ!それには、重要な価値があるんだよ!」
「不幸が価値なんですか!?暑さで、頭がおかしくなりましたか?!」
ぎゃーぎゃー騒ぐ二人に対し、RDはその十字架の情報を探り出していた。
[二人とも、聞いて下さい。その十字架、確かに不幸を呼びますが、同時に幸運ももたらすようですよ。それを持っていたのは、独裁者や大統領クラスの人間ばかりですが……。]
「ちっがーう!RD!これはね、……世界を支配出来る程の力を持った代物なんだよ。」
少し、クイーンの表情が曇った。
「今更支配でもしようと思ってるんですか?」
「いや、その気はない。ただ……これを私以外の人間が持っていたら、どうなると思う?」
「そりゃあ……。戦争になりますね。」
「だろう?だから、私が持っていないと、危ないと言う訳だ。」
そのような持論を立てて、良いのだろうか。と思うジョーカー。RDは、確かに。と言っていた。
[クイーンの言う通りですよ。他の、見知らぬ誰かに渡ったら、世界が混乱に陥ります。ですからクイーン。それはいつもの場所に、保管をお願いします。]
「うん、分かっているよ。」
クイーンはその十字架を持って、リビングから消えた。
「……RD。本当に、それ程の力を持つ、十字架なのか?僕には、普通の十字架にしか、見えなかったが……。」
[本当ですよ。調べ直したら、出て来ましたし。]
「……なんで、クイーンが集める宝物って、こう、厄介な物も、紛れ込んでいるんだろうか。」
[運の無さが、表に出ていると言う事ですよ。]



クイーンは、十字架を金庫室に入れた。この金庫室は、ただの金庫室ではない。クイーン以外、誰も開ける事が出来ないのだ。たとえ敵に奪われたとしても、どんな機械を使っても、破壊する事は出来ない。
クイーンは、ふと、嫌な事を思ってしまった。
「この事を、他の怪盗及び、犯罪者が知っていないと良いな……。」
ふぅー。と息を吐くと、その場から立ち去った。


そしてリビングに戻ると、昼食の時間であったので、RDが用意してくれていた。
「気が利くね。」
[ここの所、あなたの生活リズムが崩れている上に、食べ物の偏りが目立つので、ヘルシーメニューです。]
怒った口調でそう言われ、出された日本食の蕎麦を食べていた。
「日本食…。」
ジョーカーは、そうめんの事を思い出していた。だがあのそうめんとは違い、麺に味が付いていると直ぐに分かり、美味しいと言いながら食べていた。クイーンの箸は、止まっていたが。
「食べないんですか?」
「……インスタントラーメンが食べたかった。」
[クイーン!]
怒ったRDは、大声で怒鳴っていた。クイーンは、はいはい。と言いながら、蕎麦を食べ始めた。
「あ、そうだ。クイーン。この絵画、盗む気には、なれませんか?」
ジョーカーが、新聞の一ページを、クイーンに見せた。クイーンは絵画かぁー。と言いながら、その新聞を見た。
「……ふむ。ルーヴル美術館に展示される代物か…。」
「どうです?」
「絵画は却下。」
その一言で、新聞を放り投げた。それを見たジョーカーは、呆れていた。
「……そうだ!久々に、砂漠にでも行かないかい?」
「……砂漠に良い思い出は、無いんですが。」
「良いじゃないかー。なんやかんだ言って、ぜんっぜん観光出来てないんだからさー。」
「観光メインなら、一人で行って下さい。」
[ちなみに、今のエジプトは危険ですよ。ここ数年のテロ組織のせいで。]
ジョーカーとRDに、遠回しに行くな。と言われてしまったクイーン。しょんぼりしながら、蕎麦を啜っていた。
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