怪盗クイーン

□祈りを響かせて
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僕は、神なんて信じていない。

クイーンも、RDも。

僕の神と言ったら・・・・、


あの日、死にかけていた僕に手を差し伸べた人こそ、神に見えた。
勝手な妄想かもしれないが、僕から彼が、そう見えた。




「ジョーカー君、明日から休暇を取ろう!」
・・・・・・すみません、今の言葉、全て取り消させてください。
あんな人が僕の、神だなんて思いたくもない。
「・・・・・・一昨日まで休暇でしたよね?」
「実は日本のとっても景色のよい旅館を見つけて、温泉に浸かりたくてね〜」
完璧に僕の話を無視ですね。
「はぁ・・・・」
【呆れないでください】
「無理だろ・・・・・」
【あれでも、あなたを元気づけようとしてるんですよ?】
・・・・・・・そうだった。
僕は昨日、クイーンと共に盗む予定だった宝を盗もうとした時、何者か分からない者に、宝を横取りされた上、僕はクイーンを守ろうとして深手を負った。敵が放った銃弾がクイーン目掛けて飛んできたので、反射的に庇った。お腹に当たったけれど、貫通まではしてなくて。幸い、難を逃れた。
しかし、傷が残った上に、まだ治っていない。当り前だろうが・・・・・。
「僕が力不足なせいに・・・・」
【自分を責めないでください。あなたが悪いんじゃありません。私が悪いんです。通信が2秒遅れてしまっていて・・・・】
「RDのせいじゃないさ」
本当に、自分が弱いから、自分を傷つけないと、他人を守れない。
「・・・・・・ジョーカー君」
深刻な顔をして、クイーンがこちらに向かってきた。
「本当に、すまなかった・・・・・」
僕が座っているソファーの隣に腰を下ろし、僕の傷の所に手を置いた。
「私が、もっと早く敵の攻撃に気付いていれば・・・・」
「クイーンが悪いんじゃありません。僕の力のなさが原因なのです」
「・・・・君は相変わらず自分を責めるな」
クイーンはそう言うと、ソファーから立ち上がった。
「・・・・・RD、トルバトゥールを、ドイツのケーベラー教会に進路を変えてくれ」
【・・・・・分かりました】
「クイーン・・・?」
そのままクイーンは立ち去ってしまった。
何故・・・・・、教会に?


ほんの一時間ほどで、ドイツに着いた。
ケーベラー教会付近の上空からワイヤーで地上に降りる。
「・・・・・」
どうも教会に来ると、厳かな気持ちなる。
僕みたいな人間が、こんな清い場所に来ても良かったのだろうか?
いやきっと、駄目に決まっている。
神だって、こんなおちゃらけた人間には来て欲しくないだろう(勿論、あの人を指して言ってます)。
「さあ、入ろうか」
クイーンが扉を開け、ぼくは引き込まれるかのように、教会の中へと入って行った。

何だろう、この気持ち。
教会の中は静寂に包まれては、いなかった。
ただ哀しいメロディーのパイプオルガンが聞こえてくる。
何列にも続く木製の椅子。
左右の壁に刻まれたレリーフから、悲しみを感じた。
イエス・キリストの十字架の後ろには、大きなステンドグラスがある。
「……人間何か、ちっぽけに思えてしまうね」
クイーン?
「実はね、ここに一度盗みに入ったことがあってね」
教会と言う、聖なる場所で、あなたは何をしてるんですか!
「だが結局は失敗してしまったがね」
「………珍しいですね。あなたが失敗するなんて」
「ここの神父の方が一枚上手、で、やられてしまったのさ」
クイーンは前へと歩みを進めていた。
「十字架に埋められた、あの………宝石目当てでね」
十字架の前に立つ。
「不思議なものだな。盗もうと宝石に触れた途端に、何かが聞こえたんだ。『あなたの罪は赦された』とね」
良く、分からない。
「正直、理解できなかったよ。けど、今なら理解出来るかな?………、あえて今は、言わないけど」
クイーンは十字架に触れた。
「さあ、日本へ向かおう」
‥……………?
「用は、これだけですか?」
「まあね」
クイーンは十字架から離れ、教会の扉の方へ向かっていた。
教会から出たクイーンはRDを呼んでいる。
僕は教会を見上げた。
きっと、もう二度と、来ないから。
「ジョーカー君、行こう」
クイーンが待っている。行かなきゃ。
さあ、大変な1日の始まりだ……………。




END

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