怪盗ジョーカー U

□和やかな日々
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たまにはジョーカーの所に行こうかと思った。
ここの所会ってないしね。


で、ジョーカーの飛行船に着くなり。僕はジョーカーが居るリビングへと向かった。
「おう、スペード。久し振り」
「だね。久し振りだ、ジョーカー」
ソファーに座っているジョーカー。隣に腰を下ろす僕。
「最近は、どうだい?宝をしっかり盗めているかい?」
「おう!お前に負けないぐらいにな!」
「ははっ、そりゃ良かった」
うん、本当に良かった。いつものジョーカーだ。僕はそこに安心した。
「……ねぇジョーカー。今日も可愛いね」
「……スペード?」
「ジョーカー……」
ジョーカーの髪を手で弄び、キスをしようとした時だった。誰かに髪を掴まれ、引っ張られた。
「いたっ!ちょっと、誰だい?」
「俺だ」
僕の髪を引っ張っていたのは、シャドウだった。何でこいつがこの飛行船に乗ってるの。
「何で君がここに居るんだ」
「ジョーカーに会いに来たに決まってんだろ」
「君もか」
全く……。どうして僕のジョーカーに皆手を出そうとするんだろうね。困ったものだよ。
「その手を離してくれるかな?」
「ジョーカーから離れるんなら良いぜ」
「………」
僕はそっとジョーカーから離れた。すると、僕とジョーカーの間に座って来た。邪魔だな。僕が嫌になって立ち上がると、ふと、視線を感じた。その視線の先には、あのヴァンパイアがいた。
「っ………」
何と言うか、気配が無かったから、少し焦った。
「ジョーカー。お前、スペードの事、どう思ってんの?」
そんな質問が聞こえて来た。
「え?そりゃ、大切な仲間だろ?お前だって、シャドウ」
「………あっそ」
ジョーカーにくっついていたシャドウは、ジョーカーから一歩下がるかのように、一つ空間を開けて座り直していた。その光景に、少し笑いそうになった。
「………んじゃ、あのヴァンパイアは?」
「……シモン?そりゃ、仲間だって」
「………そうかよ」
どうやら、そこは気に入らないようで。勿論僕も気に入らない。あのヴァンパイアの事を、許した訳じゃないんだ。気に食わない奴だと言えばそうだし。気に入らない奴だと言えばそうだ。
とにかく、邪魔な存在だと僕は思ってる。けれどジョーカーは必要としているから、とても困っている。
「おや、皆さんお揃いだったかい?」
ふと、そんな重い空気を破るような声が聞こえた。あの厚化粧……。ナイトメアか。と思ったら、今日は控えめだ。
「あっ、やっと来た」
「何だよジョーカー。ナイトメアを呼んでたのか?」
「おう。ちょっと、用があってよ。持って来てくれたか?」
「ああ。これが、ミラノ大聖堂の見取り図だ」
そう言って机の上に、その大きな地図を広げだしたナイトメア。ジョーカーは目を輝かせてそれを見ていた。
「ありがとな!助かったぜ!」
「君の為なら、御やすいご用さ」
二人の会話に入れない僕は、仕方がなくシャドウの近くに行った。
「仲良いね、あの二人」
「………ちっ」
「……この騒ぎの中で聞きたいんだが、君はあのヴァンパイアの事を、どう思ってる?」
僕は気になる疑問を彼にぶつけてみた。すると、直ぐに答えが返って来た。
「気に入らねえ」
「だよね」
「だってよ、ジョーカーを一度ヴァンパイアに変え、更に蘇ったんだろ?ますます気に入らねえ」
ちっと舌打ちをするシャドウ。僕も舌打ちをしたい気分だったけれど、堪えた。
「………気味が悪い。不老不死なんて」
「ああ」
僕達は小声で、そう言い合っていた。

二人のやり取りが終わった頃。
ナイトメアが仕事があると言って帰った頃。
僕はシモンに近付いてみた。
赤い瞳……。血みたいな色だ。見てるだけでも吸われそうだ。
「………何か?」
「あ、いや。………君はどうしてここに?」
「ジョーカーに呼ばれたんだ。そうしたらすぐに君が来て」
「あぁ」
先客と言う事か。
「あー、悪いな、シモン」
「良いよ」
壁に寄りかかったまま、動こうとしないシモンに、僕は少し違和感を抱いた。
「おいジョーカー。暇か?」
「暇だったら、シモンを呼ばねえよ。なに?」
「ちっ。暇だったら俺の仕事を手伝ってもらおうかと思ったのに」
なら仕方ねえとか言って、シャドウは降ろせとか言って来た。
シャドウを降ろして。飛行船はジョーカーが目指すイタリアへと向かっていた。
「スペードはどうするんだ?」
「手伝ってあげるよ。折角来たんだし」
「おっ、そう言ってくれると助かるぜ!」
ちょっと邪魔なのが居るけれど、そこは仕方がないかな。久々のジョーカーと一緒の仕事だ。張り切ってやらないとね。













END

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