怪盗ジョーカー U

□花火
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それは、唐突だった。
僕はジョーカーに呼ばれた。


「なぁナイトメア。日本の花火って、知ってるか?」

その一言で、僕がここに呼ばれた理由が分かった。




「花火だって?」
「そう!なぁ、一緒にやろうぜー?」
「………花火ねぇ」
やった事がないから、何をどうしたら良いか、分からない。そんな僕に気付いたのか、ハチが僕の所に来ていた。
「ナイトメアさん、花火やるなら着替えた方がいいっすよ?後化粧しっぱなしだと、汗で崩れるかもです」
「………それもそうだね」
ハチに促されるまま、僕はハチに連れられ、化粧を落とす道具を与えられた。更に、着替えまで。
こりゃ、帰れそうにないな。素直に従うか。



化粧を落として、ラフな格好に着替えて、髪をまとめて。僕は準備が出来たので、ジョーカーの所に向かった。
「支度できたよ」
「おう。……って、お前、いつもの化粧と恰好してねぇと、随分違うんだな」
「そうかな?」
まぁ、かなーりラフな格好してるしね。余計だろう。
「花火はさ、どっか日本の森の中にでも止まってやろうぜ」
「ああ、良いよ」
そして飛行船は、日本の森の中の、川の近くへと降り立った。



そして、花火を取り出し、嬉しそうにジョーカーはそれに火を付けていた。
「こう言う小さくて、家庭的なやつは、ここを持ってれば大丈夫だぜ」
持ち方を教えてもらって。僕は花火に火を付けた。すると勢い良く噴き出す炎。だがそれは単に炎じゃなくて、鮮やかな色を出していた。
「これが、花火……」
「ああ。小さいやつだけどな」
嬉しそうにジョーカーも花火に火を付けていた。
「うぉ!すげぇ威力!」
「ジョーカーさん、嬉しそうっすね」
「そりゃあ!ナイトメアと一緒に出来たんだし、これ以上嬉しい事はねぇよ!」
そんなジョーカーの何気ない一言が、僕の心を揺らした。
そうか、これがあるから、僕はジョーカーに惚れてるんだ。今更再認識した感じだった。


「あー、楽しかった」
「僕も久々に楽しめたよ、ありがとう」
花火も終わって、後片付けをしていた。そんな時だった。突然空がどんっと言ったので、何事かと思った。
「お、タイミング良く、こっちの花火が始まったな」
「………大きいね」
「そりゃあ、花火大会用の方だしな」
こっちはこっちで大きいから、とても綺麗に思えた。
「……ジョーカー、今日は呼んでくれてありがとう」
「ん、どういたしまして」
にこっと笑うジョーカー。僕はそんなジョーカーの事を、更に好きになっていた。

たまにはこんな日も良い。そう、思える日であった。





帰りの飛行船で、僕は飛行船からも見える花火に夢中になっていた。
「気に入ったのか?」
「まぁ、綺麗だとは思うよ」
化粧をするのが面倒くさくて、このまま帰ろうかと思っていた。
「………ナイトメアってさ、薔薇が良く似合うけど、花火も似合うよな」
「それは、ジョーカーの方が似合ってると思うよ」
「そうかな」
うん、本当さ。僕なんかより、君の方が断然似合ってる。可愛いしね。


イタリアに着いて。僕は飛行船から降りた。
たまには、変装なしで歩こうかな。このイタリアの街を。どうせ分からないだろう、すっぴんで、こんな恰好しているのが、あの怪盗ナイトメアだと言う事を。


ジョーカー、今度は僕が君に何か見せたりしてあげるよ。ちゃんと、薔薇を持ってね。
君だけのためなら、僕は何だって出来そうな気がするんだ。
大好きだよ、ジョーカー。














END

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