怪盗ジョーカー U

□HALLOWEEN PARTY
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この世界に蔓延っている悪霊達が、この日ばかりは怯えていた。いつ地獄へと送られるか、分からないからだ。だが現代の人間はハロウィンの本来の意味を知らなく、ただ仮装できる日だと思いこんでいる。悪霊達はそんな人間に憑依し、数々の事件を起こして来ていた。そんな中、一人の男は平然と人間界を歩いていた。ヴァンパイアと言う身分でありながら、彼は人間に紛れ生活を送っていた。今日がハロウィンだったか。と彼は街の浮かれた様子を見てそう思っていた。何千年と生きていると、日付感覚がおかしくなってしまうようで。カレンダーを見てもぴんと来ないのが事実。こうして人間が浮かれていないと気付かない程だ。と言う事は自分の出番か。彼はそう思い、夜の街へと繰り出そうかと考えたが、こんな日こそ会いたい人物がいる。折角だからその人の元に行くのが得策だろうと考え、その人物に電話をし、来てもらうように言っていた。


飛行船が街外れの森の頭上で止まって。梯子が飛行船から垂れて来て。彼はそれに捕まり、飛行船へと乗り込んだ。リビングの方へ向かうと賑やかな声が聞こえた。まさかと思い、ひょこっと覗いてみるとそこには想像もしないぐらいの怪盗達が集まっていた。
「おう、シモン!ハッピーハロウィン!」
それを聞いて呆れるのは、ヴァンパイアのシモンであった。まさか彼までこうなっているとは……。甘いムードを作りだすのは無理だなと悟り、諦めていた。ジョーカーが座るソファーへと腰を下ろし、部屋を見回した。
楽しそうにパンプキンパイを食べたり取り合ったりしている怪盗達。また他の怪盗は、ハロウィンが題材となっているホラー映画を見て怯えている。その光景はあまりにも浮かれていた。
「………これだから人間は」
「ま、まぁそう呆れるなって!ほら、クッキーやるよ」
ジョーカーからかぼちゃの形をしたクッキーを貰うシモン。食べてみると程よい甘さであった。
「……それにしても、凄い浮かれようだね。そんなにハロウィンが好きなのかい?悪霊を追い払う儀式だと言うのに」
「……んー、今の奴らは、そんな事知らねえんじゃね?まぁ、あれだよ。楽しめればそれで良いんだって」
単純な人間共だ。シモンはそう思っていた。
「……つかシモン。どうして急に、俺に会いたいとか言い出した訳?」
「好きな奴に会うのに、いちいち理由がなきゃ駄目なのかい?」
そう言った直後、何処から現れたのか。シャドウがシモンの前に居た。
「誰が、誰の事を好きだって?」
「あれ、聞こえてなかったのかい?僕はジョーカーに惚れてんだ」
「ふざけんな!ジョーカーは俺のものだ!」
ジョーカーの腕を引っ張り、自分に引き寄せるシャドウ。その光景を見ていたスペードがため息を零していた。
「相変わらず強引な……」
「うるせぇ!取られてたまるものか!」
ジョーカーの意思もなしに、何を言っているのだろうか、この男は。ジョーカーはシャドウの腕から逃れると、ソファーに座り直した。
「俺を独占しようなんて、100年はえーんだよ、シャドウ。そんな事は良いから、楽しもうぜ?」
敗北感があったのか。シャドウはふんっと言うと何処かに行ってしまった。
「ありゃ」
「子供だね」
シモンがくすっと笑っていると、ナイトメアがこちらに近付いて来た。
「それにしてもジョーカー。よくもまあ、こんなに怪盗を集めたものだね」
「ああ。ハチと二人でやるのもあれだろ?だからそれなりに仲の良い奴らとかに連絡してな」
それでこの人数か。ジョーカーの性格は皆に好かれていると言う事か。シモンはふぅと息を吐くとジョーカーを見つめた。
「………君はやっぱり可愛いな」
「なっ何言ってんだよ!」
シモンの頭を殴るジョーカー。その光景を見ていたハチが笑う。
「相変わらず、ジョーカーさんの事が好きっすね」
「そりゃあね。僕の理想の人間だしね」
ふわっとジョーカーの髪を撫でながら言うシモン。
「………あっそうだジョーカー。Trick or treat?」
「………はいはい」
渋々カップケーキを渡すジョーカー。だがシモンはその受け取ったカップケーキを机の上に置くと、ジョーカーの首元に顔を近づけていた。
「僕はヴァンパイア何だよ?欲しい物はただ一つ。君の血さ」
「えっちょっ……!」
その光景を見たスペードがシモンの髪を掴んで強引に離させた。
「抜け駆けはなしだよ」
「………良く言う。自分だってやりたいくせに」
そこで睨み合う二人。ジョーカーはそのうちにとソファーから逃げ出していた。
「あっこら!」
「うるせー!俺はまだ食われたくないんだよ!」
ジョーカーを追い掛けようとするシモンだが、当たり前のようにスペードも追いかけて来た。
賑やかなハロウィンの夜となってしまったが、シモンは今日ぐらい許してやるかと走りながら考えていた。










END(あとがき)

こんなので申し訳ない……。イベントネタは難しいので……。
ここまで読んで下さって、ありがとうございました!

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