怪盗ジョーカー U

□書架の集まりと幾千の音色
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何故かこの日に限って、本が読みたくなった。しかも僕が読みたい本は、昔のだ。今あるか分からない。だから図書館に行く事にしたんだ。イタリアよりイギリスの方が、昔の本が沢山ありそうだから、僕はロンドンに向かう事にした。もしそこでジョーカーに会ったら、奇跡だね。

淡い期待を抱きつつ、僕は大英図書館に来た。勿論変装はしている。僕程の怪盗になれば、有名にもなるからね。見つかったら大変だ。
……にしても、大きいな。探してる本、見つかると良いんだが……。
エアコンが効いた図書館内は、外の暑さを半減してくれていた。あぁ、ずっとここに居たいよ……。そう思いつつ、図書館内に設置されている機械で、僕が探してる本が無いかどうか、調べていた。するとヒットしたので、早速その場所へと向かった。

「えっと……」
てっきり上の方にあるのかと思ったら、下にあったので助かった。その本を取り、読もうとした時だった。
「……まさか、ナイトメア?」
この声……。こちらもまさかと思い、本から目線を逸らして、目の前に居る人物を見た。
「……もしかして、ジョーカー?」
お互いに、おぉっ!と言う感じになっていたが、声を出さずにそれを表現していた。
「どうしたんだよ、イギリスに来るなんて……」
「ジョーカーこそ、何故図書館へ?」
こそこそと話す僕達。ほら、煩いと他のお客に迷惑だからね。
「ちょっとな、仕事の為に必要な本があって……」
ああ、なるほど。君らしいね。と、言うよりちゃんと休んでるのかが、心配になるよ。
「それでお前は?」
「僕?……読みたい本があっただけさ」
「ふーん?」
……あっ、これは、良いかもしれない。良い事を思い付いた。
「……ジョーカー。君のその仕事で必要な本、探すの手伝うよ」
「え、本当か!?」
瞳を輝かせるジョーカー。だってそうすれば、図書館デートが出来るからね。


ジョーカーが探していると言う本は、何やら、奇妙な本らしい。読んだ人間を、その本の世界へと誘う本とか……。
「その噂、完璧な嘘なんだ」
「はっ?」
「その本の持ち主が、昔、へそくりを隠してたらしいんだ。本の間にな。で、その本は出版用の本だったらしいんだけど……、間違えて入れちまってたんだと。そんでその本を回収すべく、そんな噂を作って開かせないようにしてたのさ。まぁ、……持ち主が回収する前に、本を預かった業者の人間が、その金を貰ってたって話さ」
あぁ、なるほど……。何とも単純な話だね。
「それで?その本自体は、価値があるのかい?」
「……まぁ、あんましねぇな。出版されてたしな。けど、その本にだけ書かれた暗号があるって話だ。だから自分の目で確かめようと思ってさ。もし本当に暗号が書いてあるなら、隠し財宝に繋がる手かがりになるしよ」
ふーん、なるほどね。君らしいね。


それからその本を探したが、見つからない。ここに設置されている機械を使っても見つからない。と言う事は無いのか……。ジョーカーはため息を零していた。
「……まぁ、仕方ない。古いしな」
わざと笑って見せるジョーカーに、僕は思わずキスをしてしまった。
「っぅ!?お、まえ、何して……!」
小声で焦りながら言うジョーカーに、つい僕はクスッと笑ってしまった。
「ついだよ」
「ついって……。はぁー…」
君がそんな顔をするから悪いのさ。僕はふと持っていた懐中時計を見た。すると、始めにここに来た時間から、4時間も過ぎている事に気付いた。
「おっと……。ちょっと居すぎたようだ。僕はそろそろ、帰るよ」
「あっあぁ……。今日はありがとな」
そこで僕等は別れた。ジョーカーはまだ図書館に居ると言っていたしね。

全く……。ジョーカー、君には敵わないよ。可愛すぎる。またこうやって、デートしようね。







END(あとがき)
R様、リクエストありがとうございました!
図書館デートと言うリクエストだったので、このような感じに仕上げましたが……。お気に召したら幸いです。

ここまで読んで下さって、ありがとうございました。

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