怪盗ジョーカー U

□avarus
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おかしい。ここ最近、喉の渇きに悩まされる事は無かったのに……。急に渇き始めた。何故だか僕には分からない。適度に血を飲んでいるから、こんな現象が起きる筈は無いんだがな……。あれか?ジョーカーに出会ったからか?彼が欲しくなったのか?……まぁあり得る事だね。彼は僕を葬った、始めての人間だしね。なら、彼に会いに行こうか。それで血を少しだけ貰えれば良いんだ。
彼が素直にくれたら、直ぐに終わるけど、絶対嫌がるだろうな……。

ジョーカーの元に向かおうとしたけれど、彼が何処に居るか分からない事に気付いた。……疲れてるな、僕。早く血が欲しい。勿論、ジョーカーのね。
さて、ここからどうやって彼の情報を得ようか……。今僕が居る場所は、深い森の中だ。まぁ、自分の屋敷に居たから、そうなるんだが……。取り敢えず、街に向かうか。もしかしたら、て事もあるしね。

街に着く頃には、陽はすっかり落ちて夜になっていた。夜の街は明るく、人間達の欲望で満たされていた。そう、この街は、そう言った街さ。……全く。この光景を、あの神が見たらまた滅ぼすんだろうね。ソドムやゴモラのように。僕は快楽には溺れないよ。落ちて無いからね。……それに人間は嫌いだ。あぁ、ジョーカーは別だよ。彼は特別なのさ。
そう思ってる時だ。誰かに肩を掴まれた。慌てて後ろを振り返ったら、そこに居たのは僕の探していた男だった。
「よっシモン。こんな所で、何してんだ?」
「……それは僕が聞きたい事だけど」
「……まぁ、一仕事終えて、近くに何か街とか無いかな?て思ってたら、……ここしか無くてさ。仕方なく立ち寄ってんだ」
ああ、なるほど。 それで、こんな街に居るんだね。
「……なぁジョーカー。仕事終わって疲れてるんだろ?どうだい?そこの店で何か飲もう?」
「んー、まぁお前の奢りなら……」
だろうと思ったよ。……仕方ない、今回は、奢ってやるか。僕は良いよ、とため息交じりに頷いた。
「……君ってさ、以外にお金掛かるよね」
「だって仕方ねぇじゃん。疲れたし喉渇いたし腹減ったし」
「………はぁ」
彼から色気が感じたのは、勘違いだったのかな……。そう思ってしまう程だった。


店を探していると、欠伸をし出したジョーカー。眠いのかな、と思ったが彼はいつも眠そうな事を思い出した。
「……ちゃんと眠れてるのかい?」
「多分……」
怪盗ってさ、大変だよね。趣味……彼からしたらだろうけど。趣味で毎日頑張るのも、どうかと思うよ。仕事、て言えば良いのに、彼はずっと趣味、て言い続けてるから、彼らしい。
「つかよ、シモンってさ、普段何してんの?」
「………人間狩り」
「えっ……」
「……冗談さ」
「あっ……だよな。ははっ、そうだよな……」
何てのも冗談、て言ったら君は、何て顔をするんだろうね。



お目当ての店に着いて、中に入った。この街は変に身分証を求めたり、年齢を確認したりしないから楽で良いよ。

僕達はカウンター、ではなく個室で飲む事にした。ここの店ね、不思議と個室があるんだ。一応ただのバー的な店、何だけどね。
「なぁ、聞きたかったんだけど……。シモンって年いくつ?」
年……。人間で言うと僕は、何歳になるのかな。考えた事無かったな。
「さあ……。誕生日何か無いから、分からないよ」
「無いのか?」
ある訳無いだろう。僕は、……いつ生まれたか分からなければ、自分が何故ヴァンパイアかも分からないのが、事実。人間だってそうだろ?何故自分が人間か、考えた事あるか?それと同じようなものさ。
「……あぁ。まぁ、20歳は過ぎてるから安心しな。酒はOKな年さ」
「あー……」
「……君は、お酒は飲める年齢なのか?」
「………シークレット」
全く……。どうしてそこまでして、年とか君は隠すんだろうね。不思議でたまらないよ。
っと、そんな話をして、飲み物を適当に頼んで。飲み物が運ばれて、ジョーカーが飲み物を飲んだので、僕は彼の隣に座った。今まで向かい側に座ってたからね。
「……んだよ」
「……なぁ、お前の血、吸わせて……?」
僕は彼を少し押し倒すように、彼に迫った。
「………シモンさんよ、あんた、それが目的で俺に近付いたろ」
「まあね。だって……、僕を満たせられるのは、君しか居ないから」
じっとジョーカーを見つめる。彼の青い瞳は、僕の視線を外していた。
「……今日だけだぞ」
あれっ……。意外に素直。僕はジョーカーの首元に、ぱくりと噛み付いた。
「……っ、ぅ……」
甘い声を漏らすジョーカー。全く、可愛いな。だから好きなんだよね。その声をもっと聞いていたいけど、我慢だね。ここは一応、お店な訳だしね……。僕はそっとジョーカーから離れた。
「ご馳走様」
「……あっあぁ……」
ふふっ、可愛いね。そのちょっと息が荒くて、頬を赤くしている所とかね。
「……あ、そうだ。感染しないから、安心して。……あの頃とは違うからさ」
「……ふーん」
そう、あの頃とは違う。……僕も進化したしね。
それから僕はジョーカーの向かい側にまた座り、普通に話をしたりしていた。

そしてジョーカーが帰りたい、と言い出したので店から出た。
「今日はありがとね、ジョーカー。お陰で、喉の渇きが治った気がしたよ」
「……ふっふん」
頬を赤くしながら、ジョーカーは飛行船がある方へと、行ってしまった。

我慢した僕を、褒めて欲しいよね。君の血を、吸い過ぎないように気を付けながら吸ってたんだからさ……。次会った時、僕はまた我慢出来るかな。まぁ、本当はする気は無いけどね。






END(あとがき)
もこ様、リクエストありがとうございました!
ご希望通りになっていたら、幸いです……!
ここまで読んで下さって、ありがとうございました。

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