怪盗ジョーカー

□海賊の嘆きと魔法の指輪
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一人の海賊が、それを手に入れてしまった。その海賊は、それを自分の思うように使っていた。だが一人のその海賊の子分が、それを奪って逃げた。そして、それを自分の息子に託し、彼は殺された。
それとは、魔法の指輪だ。
未来からの贈り物。海賊の中ではそう言う話が、盛り上がっていた。
一人の海賊の息子は、その指輪の秘密を知らずに、ずっと力を使わずに持っていた。父の形見として。




それから月日が流れて、魔法の指輪の情報は、怪盗も知り始めた。



「魔法の指輪、ね〜」
「君は、信じないのかい?」
ジョーカーはその話を、ナイトメアから聞かされていたが、あまり信じていないようだ。
「だって、こんな世の中にそんなもんがあるとは、信じられないぜ?」
「まあ、ね………」
ジョーカーの意見に、頷くしかないナイトメア。だが、ナイトメアは諦めなかった。
「………騙されたと思って、僕と一緒に来てくれないか?」
「……………分かったよ」
ジョーカーはハチに相談し、ハチを飛行船に残し、ナイトメアと共に、ナイトメアの知り合いの海賊の元へと向かった。







今の世の中には珍しい、中世の海賊が、その港にはいた。観光客は、その港には誰一人居なかった。と言うより、海賊以外誰も居ない。居られない雰囲気を作っているからだ。
「……ナイトメア、俺、すごーく此処に居辛いんだけど……………」
「大丈夫さ」
ナイトメアは海賊が沢山居る中を、お構いなしに進んでいる。
「此処の船長に、会いたいんだけど?」
一人の大きな男に、そう言うナイトメア。大きな男はナイトメアとジョーカーを、海賊船の中へと案内した。



海賊船内は、薄暗いが何処か落ち着くような感じだ。一番奥の部屋の前へと、案内された。ナイトメアは躊躇無くノックをした。直ぐに声が帰って来たので、中へと入る二人。
部屋には、一人の青年が何かを椅子に座り、紙らしき物に書いていた。オレンジ色の長髪が似合う、整った顔をした青年が、二人に気付いたらしく、書く手を止めた。
「ナイトメア!久しいな!」
「僕も久々に会えて嬉しいよ」
その青年はナイトメアに近付き、握手を交わしていた。
「……………そちらは?」
「僕が良く話すジョーカーさ」
「ああ、君が。………俺はノーティス。この船の船長さ」
すっとジョーカーに手を差し伸べて来た。
「よろしく…………」
ジョーカーは、ノーティスと名乗る青年と握手を交わした。
「ノーティス。あの噂だけど………」
ナイトメアがそう切り出すと、ノーティスは、ああ、と言って戸棚の方へと歩き出した。
「確か………」
戸棚から出したのは、一枚の紙切れであった。
「これを見てくれ」
それを机の上に広げ、二人に見せる。
「これは………?」
「暗号さ。……………此処には、『金髪で青い瞳を持つ少年が鍵を握る』と書かれている」
うーん、と唸るナイトメア。
「僕の敵には、居ないな………」
その二人の中で、ジョーカーだけがその名に聞き覚えがあった。多分、あいつのことだろう。
「(キャプテン・ブルー…)」
ふと、ブルーの事を思い出した。彼は海賊の息子であり、父親はもう死んでいる。もしかしたら………?だがこの事を二人に言うつもりはない。ノーティスと言う青年の事を、まだ信用していないからだ。
海賊とは、極悪非道な人間と聞いている。あの時ブルーと戦った海賊もそうであった。それに海賊は、どんな手段も選ばないと聞いている。
「ジョーカー。俺の手伝いを、してくれるか?勿論タダとは言わない。その指輪はあげられないが、俺達が集めた宝を、7割程プレゼントしよう。どうかな?」
そんなに?ジョーカーだけでなく、ナイトメアも驚いた。きっと指輪は、そこまで価値があるものだろう。ここは大人しく従って、後で横取りをすれば良いだろう。
「良いぜ。乗った、その話」
「OK!それじゃ、早速海に出ようか」
ジョーカーは、ふと思った。ハチに連絡をしていない。携帯を出して、メールでハチに報告しておいた。




ジョーカーが海に出た頃、一人の探偵が、その指輪の噂を聞きつけて、海に出ようと港に来ていた。その指輪が、もしよからぬ輩の手に渡ったら?世界は、その者の物となってしまう。そうなれば、世界は崩落する。防がねば。
「……しかし、どうやって船を調達するか………」
ごく一般的な港町に居るので、大海原に出ると言う、船などない。彼がそこで考えていると、一人の少年が彼に歩み寄ってきた。
「あれ、お前……。探偵のビリジアン?」
「え?…………あ!お前!」
ビリジアンの後ろに居たのは、シャドウであった。
「何してんだ?」
「君こそ……。(本当は捕まえたいけど、今はそんな事を言ってられない。彼に頼んでみよう)君、船は持っている?」
「まあ、あるっちゃあるけど………」
「乗せて、くれないか?」
「………目的は、同じ?」
「ああ」
「………だったら付いて来い。その代わり、俺を捕まえようとか、考えるなよ?」
「はいはい」
そうしてビリジアンはシャドウが持つ船へと乗り込んだ。








海は広い。ジョーカーは、改めて感じ取った。いつも飛行船で世界を廻っているので、船がこんなに遅いとは思ってもいなかったのだ。
「………なあ、その金髪の海賊を、どうやって捜すんだ?」
ジョーカーとナイトメアは甲板に出ていた。
「ノーティスが持っていた他の地図に、確か何か書いてあった筈だよ。僕は何も聞いてないけれど」
「そうか……」
ノーティスを疑っているジョーカー。そこへノーティスが現れた。
「二人とも、これに着替えて」
ノーティスから渡された物は、服だった。海賊の格好をしろと言うのだろうか?
「一応ここの船の船長はこの俺だ。規則には、従ってもらうよ」
「はーい」
ナイトメアとジョーカーは、その服を持って、一旦船内へと戻った。


そして着替えてからまた甲板へと出て来た。
「………ナイトメア、お前、中世のヴァイキング?」
「失礼な。これはちゃんとした海賊の、それも船長の次に権限のある人が着る服装だよ?」
ナイトメアが着ている服。ゴシック系の服を、いつも身に纏っているナイトメアからしたら、少し珍しい服装だ。だがノーティスもそこら辺には配慮してくれたのだろうか。何処か、中世ヨーロッパの貴族のような格好なのだが、海賊らしい格好なのだ。
「ジョーカーのは、………、うん、君にぴったりだね」
(ジョーカーの格好は、ご想像にお任せ致します☆)
「るっせー!………ちょっと、肌の露出が多くて、慣れねえな……」
ジョーカーがそう言うので、下から上へとじっくり眺めるナイトメア。ジョーカーは尽かさず後ろを向いた。
「……やれやれ。で、ノーティス。行く宛は、あるのかい?」
「あるさ。このまま北へと行けば、無人島……いや、奴の島があるはずだ」
ノーティスは、海をじっと見つめ、そう言っていた。
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