怪盗ジョーカー

□たとえ入れ替わっても俺はお前を
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突然のお雨は、人を狂わせる。





「はははー!オ・ルボワール!」
いつものように、宝を盗んで帰る所だった。今回はハチは先に飛行船で待っている。
ジョーカーは警察の目を嘲るため、近くの森へと逃げ込んでいた。
「そこまでだ、ジョーカー!」
「げ、シャドウ!」
ジョーカーの宝を横取りするために、最近良く現れる。だが本当の目的は違うようだ。
「くそっ!」
慌てて逃げるジョーカー。そこへ突然の雨。それも大粒だ。走ると転んでしまうので、走りたくは無かったが、走るジョーカー。それを追いかけるシャドウ。
森の中を走る二人。シャドウは追いかけるのに飽きたらしく、傘の銃をジョーカーに当てない様に撃った。だが、爆風で吹き飛ばされてしまったジョーカー。
「うわぁぁ!」
「しまった!ジョーカー!」
慌ててジョーカーを追いかけ、ジョーカーの腕を掴んだ。
「!崖かよ……っ!」
ジョーカーはギリギリでシャドウに助けられた。だが、地面が抜かるんでいる為、シャドウがいる地面が落ちてしまった。
「うわぁぁ!」
「くそっ!」
シャドウは落ちながらジョーカーを庇うように、彼を自分の腕の中へと抱き締めた。







崖から落ちた二人は、奇跡的にも助かっていた。
崖の下は、まだ少し森ではあったが、向こうの方は町が広がっていた。
「………?あれ、俺」
ふと隣を見ると、倒れている自分が居た。
「助かったのか〜……。て、えぇ〜〜!?」
慌てて自分の顔を触るジョーカー。何かが違う。
「うるせーな………」
そのジョーカーの叫び声で起き上がるシャドウ。ふと、ジョーカーの顔を見たのだが、彼も絶叫した。
「ななななんで……」
「俺が聞きてーよ!何で……?!」
つまり、ジョーカーがシャドウに。シャドウがジョーカーに。中身が入れ替わっていたのだ。
「………どうする?」
「別に俺は良いが?」
「何が?」
「だって、たとえ中身が入れ替わろうと、俺はお前に……」
「わーーー!」
それ以上聞きたくないので、耳を塞ぐジョーカー。呆れるシャドウ。
「………さて、と。これからどうする?」
ジョーカーは、自分の姿を見つめていた。
「?どうした」
「あ、いや……。だって、姿は俺なのに、何か辺でさ……。それに、やっぱり中身がシャドウだから、かな。声が低くなってるし………」
「まあ、そうだろうな……。俺からしたら、逆だぜ?」
お互いに、睨み合い、笑う。
「別に、このままでも良いかな」
「おいおい、俺は困るぜ?」
ジョーカーに微笑むシャドウ。だがジョーカーから見たら、自分にそんな顔されているので、少し変な気持ちになっていた。
「………俺も、やっぱり困る」
「なら、どうする?」
「………取り敢えず、俺の飛行船に戻ろう。………シャドウ、ハチに電話して、此処に来るように言ってくれ。あ、なるべく俺に成り済ませ!」
「はいはい………」
こうして、二人は中身が入れ替わったことを、秘密にしながら飛行船へと乗り込んだ。


ジョーカーは、ハチに気付かれないように、シャドウを演じた。
シャドウも怪しまれないように、ジョーカーを演じた。
「あ、ジョーカーさん。今日クイーンが来るらしいっす」
「…………何で?」
「今日盗んだ宝石の幾つかを貰いに、……………昨日言ったすよね?」
ビクッとし、横目ですジョーカーを見るシャドウ。ジョーカーは頷いた。
「ごめんごめん。今日突然シャドウと会ったから、忘れちまって」
「ジョーカーさんらしいっす」
胸を撫で下ろすシャドウ。バレてはいないようだ。
暫くして、クイーンが来たが、バレる事はなかった。シャドウの演技力が上手かったのだ。
「ありがとね、ジョーカー」
そう言って、クイーンは帰った。安心する二人。
「あ、ハチ。俺たちちょっと、出掛けてくるわ」
「了解っす」
ハチは、何も疑っていないようだった。



外に出てみたのはいいが、これからどうしようか、悩んでいた。
「うーん、………」
「流石にこのままジョーカーのまま、ではローズに会えねえし…………」
「………なあ、もう一回、崖から落ちてみるか?」
「…………………やってみるか」
二人はそのままあの崖へと向かった。




ジョーカーは、自ら落ちるのが怖い、と言いだしたので、シャドウ(自分自身)に抱き締めながら、落ちる事にした。
「……………行くぞ」
「ああ」
シャドウと共に飛び降りた。



先に目が覚めたのは、シャドウだった。
「………戻ってる」
安心するシャドウ。ふとジョーカーを見た。彼も起きあがって、確信していた。
「はぁ、良かった…………」
「………おいジョーカー。戻ったんなら………」
そこまで言い掛けたのだが、既にジョーカーは居なかった。
「ちっ………仕方ねえか」
ふと空を見上げ、帰るシャドウ。

もう二度とこんな事はお断りだ。

そう呟いて。




END

(あとがき)
七氏様、リクエストありがとうございました!
中身が入れ替わるネタは、このような感じになってしまいます、すみません……!

ここまで読んで下さって、ありがとうございました!

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