怪盗ジョーカー

□季節外れの雨は災いを呼ぶ
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それは、雨が降る季節だった。
「やったな!ハチ。今月これで十個目の宝を盗んだぜ!」
「流石っす!ジョーカーさん!」
「おいジョーカー。油断をするな」
「はいはーい」
今回は、スペードと手を組んでやった仕事である。三人は車の上を飛び跳ねて行った。
「待て!ジョーカー!!」
「げっ、シャドウ!」
そこへシャドウが現れ、妨害を始めた。
「その宝は渡さねえ!」
「ちょっ!馬鹿っ!」
シャドウはジョーカーが手に持っていた宝を奪おうとした。走りながら。だがジョーカーは体勢を崩し、車の上から落ち、走って来るトラックに轢かれそうになった。
「ジョーカー!」
シャドウは慌ててそのトラックに向かって発砲した。幸いジョーカーはトラックには轢かれなかったが、どうやら落ちた時に頭を強く打ったようだ。気を失っている。
「………シャドウ、君のせいだぞ」
「っるせえ!分かったよ、運べば良いんだろ」
シャドウはジョーカーを背負って、ジョーカーの飛行船へと向かった。勿論スペードも一緒に。



中々ジョーカーが目を覚まさないので、シャドウは手当てに当たっていた。
「……起きろよ」
頬をパチパチと叩くシャドウ。だが、ぴくり、ともしないジョーカー。
「………これでもしジョーカーが起きなかったら、君を殺すよ」
「笑えねえ冗談は止めろ」
二人が睨み合っている中、ハチはテキパキと晩ご飯の準備をしていた。
「きっとジョーカーさんは、良い匂いがすれば起きるっすよ」
「………」
何て単純な男だろうか。呆れる二人。

だがジョーカーが目を開ける事は無かった。
それから深夜になって。
ジョーカーは目を覚ました。
「こ、ここは………?」
「ジョーカー!」
そのシャドウの声に、スペードもハチも起きた。
「大丈夫か?」
「……………えっと、貴方は、誰、ですか?」
「……はっ?」
しばし固まるシャドウ、ハチ、スペード。


「………で、記憶喪失?」
「あのジョーカーさんが嘘を付く事なんて、ありませんっす」
「まあ、ふざけている様には、見えないな………」
「………」
「シャドウ、謝る事があるっすよね?」
「……分かったよ。あいつの記憶が戻るまで、俺が看病する」
「じゃあ僕は、シャドウがジョーカーに変な事をしないように、見張っているよ。仕事はしばらく休暇だ」
「なら、オイラもっす」
シャドウは深いため息を付いた。自分も仕事が出来ないからだ。

そして、ジョーカーが記憶喪失になってから、丸一日が経過した。
ハチとスペードが提案した事。それは、何処かで一般人に成りすまして、その町で暮らそう。自然治癒力と言うものが、人間には備わっている。もしかしたら、怪盗の職業を休業して普通に生活をしていた方が、記憶が戻るかもしれない。

スペードが、どうせならスウェーデンが良い、と言って来たので、スウェーデンで暫らく暮らす事に。勿論、森の奥の、適当な空家を見つけて、そこに勝手に暮らすのだが。
シャドウはジョーカーを連れて、スウェーデンの街を歩いていた。
シャドウは、何も話さないジョーカーを、少し横目で見つめていた。
「………あの、何か?」
「いや。……こんな調子じゃ、怪盗としての仕事は出来ねえか………」
「……俺、怪盗だったんですか?」
「あぁ。それも一流のな。………けど、その仕事も、当分出来ねえか」
「……すみません」
「………お前が悪いんじゃねえよ。俺が悪いんだ」
「シャドウさん………」
「止めろその呼び方。呼び捨てで良い」
「あ、はい。シャドウ………」
ジョーカーは、恥ずかしそうにそう呼んだ。本当にこれがあの時のジョーカーか?シャドウは、自問自答を心の中でしていた。


「そろそろ腹が減ったな………」
シャドウは、たまたま通りかかった店のメニューを見て、ここで食べよう、と思った。
「昼飯、ここで良いか?」
「あ、はい」
控えめなジョーカー。何処か気味が悪い。シャドウは、他の怪盗が現れない事を祈った。




ここのレストランは、スウェーデンの伝統料理を扱う店のようだ。
ジョーカーが控えてあまり頼まなかったのを見て、シャドウはどうしたら良いか。食事中ずっと考えていた。




そしてレストランから出て、二人はスウェーデンの街並みを歩いていた。
そこへ、暴走車が突っ込んで来た。
「ちっ!何者だ!」
シャドウは素早くジョーカーを庇い、その暴走車向けて発砲した。だがその暴走車には、爆弾が仕掛けられていたようで。大爆発を起こし、シャドウとジョーカー、周りの人々は爆風に巻き込まれた。



シャドウが目を覚ました頃には、ハチたちの飛行船に乗っていた。
「全く君は。また問題を起こして」
「仕方ねーだろ!ジョーカーの所に向かって走って来たんだからよ!あんな距離じゃ、逃げる事も出来なかったしよ!」
また言い争う二人。
「二人とも!ジョーカーさんが寝ているんすから、静かにしてくださいっす!!」
ハチに怒鳴られ、大人しくする二人。


ハチはジョーカーの為、元気が出るコーンスープを作っていた。
「ん………?あー、良い匂い」
「!??」
良い匂いに誘われ、ジョーカーは、目を覚ましたようだ。それに驚くシャドウとスペード。
「あれ二人とも、おはよー」
「………記憶が、戻ったのか?」
「ん?だな〜。って、あれは夢じゃなかったのか〜。あ、ハチ―お腹空いた〜」
それを聞いて、安堵の顔をするシャドウ。
「ったく。………なら俺は、帰らせてもらうぜ?」
「早く帰れっす」
「冷てえな。………じゃ」
シャドウは飛行船から降りて行った。その時だった。
「あーーーーーー!宝が無い!あっんのやろう……!」
「……やれやれ。記憶が戻ったと思ったら、また五月蠅い」
「本当っすね。………スペード、どうするんすか?」
「後の事は、君に任せるよ。僕は戻らせてもらおう」
スペードも、自分の飛行船へと帰ってしまった。
「ハチ!今すぐシャドウを追うんだ!」
「はいっす〜(もう、記憶が戻るなら、もっと後にしてほしいっす!)」
人使いの荒いジョーカーの性格を、治してからにしたかった。そんなハチの願いであった。








END

(あとがき)
七氏様、またまたリクエストありがとうございました。満足の行く作品で無いかもしれません、ごめんなさい。
ほとんどシャドウがメイン見たくなってしまいました、すみません!
ハチは苦手なんです。


此処まで読んで下さって、有り難う御座いました。

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