カゲロウ学園
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「お前ら、何してんの?」
「あ、とのこ君来ちゃったよ?あはは、こんな恥ずかしい格好見られちゃって可哀想〜」
「私たちはこの子と遊んであげてたんじゃん?」
「っていうかアンタ部外者でしょ?お邪魔なんだけど。どっか行ってよね」
うるさい。
死ね。
「今すぐここから出ていけ!!」
屋上には俺とそいつだけが残され、後の奴らは学校の中へと戻っていった。
「これ着とけ」
「う、ひっく……ぅ、うんっ……ごめん」
上着を貸して、そいつが落ち着くまでずっと二人でそこに居た。
「とのこ」
「何?どこか痛いのか?」
「ううん。あのね、とのこは私の事どう思ってる?」
泣き止んだと思ったら急に変な質問をしてきた。
「大切な友達だ」
「そっか、大切かぁ。うれしいなぁ……」
その時、久しぶりにそいつの笑った顔を見た。
「今ね、私には叶えたいお願いがあって、それはとのこにしかできないことなの。私のお願い、叶えてくれる?」
「何で……」
「私に命令してほしいの」
俺は、そいつが何を言って欲しいのか何となく分かっていた。
だからその願いを叶えたくなかった。
「お願い。私に、“死ね”って言って?」
「……っ!!」
「私もね、とのこの事大好きだよ。何度も助けてくれて、ずっと側に居てくれて、すごく救われた。今までで一番幸せだったの。あなたと同じクラスになれて、友達になれて、学校に来るのが毎日楽しみだった」
日の当たる暖かな屋上で、幸せそうに語った。
「だから、ねぇ、泣かないで?」
「何で……?これからもずっと守るから、それじゃダメなのかよ!」
「私ね、守られてる時、すごく嬉しかったの。でも、それと同じくらい惨めな気持ちになるの」
その答えに絶望した。
ずっと、そんな事を考えていたのか。
「最初はね、とのこってすごくそっけなくて怖い人だと思ってたの。でも全然そんなこと無くて、本当に優しくしてくれた。無くなった靴を戻してくれたし、悪口も“黙れ”って言ってくれた。朝は“おはよう”って言ってくれて、話し相手になってくれた。とのこに出会えて、本当によかった」
俺はただ友達を助けたかっただけなのに。
それさえも彼女を傷つけていたなんて思ってもいなかった。
「だからね、最後にその力で死ねって言って欲しいの」
そんなの、ただのエゴだ。
俺はそいつを力一杯抱き締めて言った。
「死ね」
虚ろになっていくそいつの口が「ありがとう」と呟いた。
今まで見たことのないくらい穏やかな顔で。
そいつは屋上から飛び降りた。