だいすきをキミに text

□すべて曝け出せばいい
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中に入れば、もぞもぞと動く毛玉こと紅明様がいる。
先程、決意したけれど、やっぱり迷いが出てしまう。
傍に近くに行き寝台に腰を下ろし、掛け布団に手を掛ける。


「…紅明様、起きてください。もうすぐ、軍議が始まりますよ」


身体を揺さぶるが、反応を示さない。
寝てしまったのかもしれない。睡眠がいつも足らない人だから、本当にはゆっくり寝かせてあげたい。
でも、紅炎様のご迷惑になってしまう。


「…紅明様」


そっと、伸びてきた手に腕を掴まれ寝台に倒れ込めば、紅明様の顔が近い。
こんなにも、顔を近くで見ることはあまりなかったためか、赤面してしまう。


「…あ、あの紅明様?」

「…私は、あなたを手放したくない」


寝起きのような声ではない。本当に、絞り出すような声で呟いている。
それに、私は紅炎様に組み敷かれている。
今から何が起ころうとも抵抗することは出来ない。
だって、私はこの人の…紅明様の妻である時点で、紅明様に抗うことは許されない。


「あなたと忠雲の仲を疑いました。私も私で、あなた以外の女を囲いました。だから、私はあなたを許さなければならないと、わかっているつもりでしたが、でも、やはりあなたは私だけのものでいて欲しいのです。清蓮、こんな私は嫌でしょうか?」

「わ、私は…」


声を出したいのに、うまく出せない。
心臓をギュッと掴まれた感覚に襲われ、こちらが申し訳なくなってしまう。
こんなにも、紅明様を苦しめてしまったなんて。


「あなたは、私が白瑛殿と一緒にいるときはいつも辛そうな顔をする。私は、わかったのです。私が忠雲とあなたが一緒にいた時に感じた痛みを、あなたはいつも感じているのですね」

「紅明様、私は…どんなあたな様でもお慕いしています」


そう告げれば、私を優しく抱きしめながら「ありがとうございます」と、泣きながら、その言葉を繰り返す。
こんなにも、脆い方だとは思わなかった。


「私に紅明様以外を愛せなんて無理なのです。もう、ずっとあなた様だけを見ています。毎朝、あなた様の元に訪れるのだって、あなた様に会いたいからなのですよ。少しは私の気持ちにも気づいてください。夜を共にすることはなくても、私はあなた様以外に身体を許すつもりはありません」

「…清蓮が愛しいからこそ、私はあなたに手を出せないでいる。それを、わかっていて言っているのですか。それならば、あなたは中々の策士ですよ」


照れている紅明様のぬくもりを感じながら、私は思う。
互を私たちは思いやりすぎていたのだと。
ただ、大事にしすぎているために伝わらなかったのだと。
そう思いながら、紅明様とそっと唇を重ねる。


20141117

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