magi
□私はいつしか呼吸すら億劫になる
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本当の妹のように可愛がっていた紅玉が結婚する。
この国の道具としていいように使われているだけだ。
紅玉はこの国にとって、必要な人物なのになぜ手放そうとするの?
紅玉の代わりに私が行けたら。そうすれば、紅炎様に迷惑はかからないのではないか。
「紅炎様、紅玉を手放すのはなぜですか」
疑問は口から出てしまった。
出してはいけなかったような気になる。
私は所詮、何も知らない飾りのような存在。
そんな私が口を出していいような問題ではない。
「そのことか。バルバットは既に利権を煌帝国に売っている。なにもない国だ。気にしたところでなにもならない」
「…そうですか」
やっぱり、私は何も知らない飾り物。
どうすれば、この無知な環境から脱出できるのだろう。
「お前は世界を知らなすぎるな」
紅炎様の言う通りだ。私は世界を知らない。
世界を私は閉ざしてしまったから。
もう、私は何も知らなくていいと思った。
狭い世界で生きようとあのときに決めてしまったのだ。
「その無知が命取りになることはない」
「……」
「なぜなら、お前は俺の妻だからな。何があろうと、俺が守ろう」
そう言ってはくれるけれど、あの人にとって私は何なのかがわからない。
ただ、私が死んでしまったら新しい后を娶らなくてはいけないことが、面倒なだけなのか。
それだけのために、私を守ると言ってしまうのか。
あの人の言動は、もう私には理解のできないところまできている。
無力な無知な私を守ってあの人には、なんの得があるのだろう。
「…ありがとうございます」
感謝を述べれば、無言のまま部屋を出て行ってしまった。
きっと、話すことに飽きてしまったのだろう。
私と会話など、ほとんどすることはないのだから。
「もう、私を手放せばきっとあの人は楽になれるのに」
あの人のいない部屋で呟くひとりごと。
誰も聞いてない言葉。
そう思っていた。
部屋の外にそっと、壁に寄りかかるようにしていたあの人がいることを知らないで。
ねえ、私はどうしていまでもあの人のそばにいるのだろう。
もう、私には私を支えてくれている人がいないのに。
どうして、なのだろう。
私はなぜ、あの時に兄上たちと父上と一緒に死ぬことができなかったのだろう。
「いっそのこと、私は消えてなくなってしまえばいいのに。この国にとって役に立たない私なんて」
もう、母上は私のことなんてみてくれないのだから。
誰も私の味方などいない。
20131104
Title:彼女が為に泣いた